摂動

NASAのinternを目指す学生Mollyは仲間と協力し、過去の地球外生命体探索計画「SETI@HOME」のやり直しに挑む。

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Focus Cell-Finallly Found It

現在。 “Magma” と刻印されたplateが貼られたsteel製のdoor。 MollyはUniの図書館内にあるFocus Cellと呼ばれる集中学習用個室にいる。 cellには窓が一つもなく、中の人間は積極的に時刻を確認しない限り昼夜すらわからなくなる閉鎖空間である。 四方の壁は吸音素材で覆われ、外部からの騒音は完全に遮断されている。 天井の照明は点いておらず、desk上の3面のmonitorが、Mollyの顔を斑色に照らしている。 Mollyは正面のmonitorから視線を外さず、手元のkeyboardをゆっくりと打っている。 両脇のsub monitorでは複数のwindowが開いていて、計測値を示す波線graphや複雑なprogramが動いているが、Mollyの意識は正面のmain monitorに集中している。 時折computerが遠慮がちにerror音を発する。 その度にMollyは両手を止めて少考する。 猫が路地を横切るくらいの時間が経つと、すぐにまた両手をゆっくりと動かす。 そして右手の小指が小気味良くreturn keyを叩くのだが、computerはまたしてもerror音を返す。 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 そのloopが永遠に続くかと思われたその時、error音とは明らかに異なるSEが響く。 「正解」を示すjingleだった。 Mollyは手を止め、画面を見つめたまま小さく呟く。 Molly「見つけた」 そしてもう一度、今度は歓喜を噛み締めるように言う。 「見つけた!」

Bedroom-Wakeup

2週間前。 Molly Snowballの自宅寝室。 sash windowの少し空いた隙間から、柔らかな風が入り込みcurtainを揺らしていた。 小鳥の囀りと射し込む陽光の角度から、早朝であることがわかった。 Mollyは16歳の学生で、早起きを習慣としていた。 部屋の本棚やdeskの上、床にまで積まれた書籍の多さから、Mollyの勤勉さが伺えた。 その多くは宇宙に関するもので、SFやmangaも含まれていた。 壁にはJohannes Vermeerの絵画「天文学者」が飾られていた。 複製であろう。 しかし、手作りの額縁に丁寧に入れられていた。 Mollyは目覚めの良さが自慢で、alarm設定した時刻よりも早く目を覚ますことが珍しくなかった。 今朝も自画自賛したくなるような起床だった。 Mollyがbed上で側臥位のまま目を開いた時、bedsideの目覚まし時計は5時57分を指していた。 設定した起床時間まで3分近くあった。 起き上がってalarmを解除してもよかったが、悪戯心が湧いた。 その姿勢のまま時計の針が進むのをじっと待った。 秒針が、世界の螺子を巻くように、2周した。 そして、長針と秒針が共に真上に達し、6時ちょうどを指そうとする瞬前に、Mollyは素早く腕を伸ばし時計上部を押してalarmが鳴るのを阻止した。 時計は小さな電子音を「プッ」とだけ鳴らし、そして沈黙した。 Molly「わたしの勝ち」 小さく呟くとbedから弾み出た。 今日はいいことが起きそうだ、と思った。 MollyはUniへ行く準備を始めた。 Mollyのbedroomはen-suite typeで、妹のSarahの部屋との間に共用のbathroomが設けられていた。 両側から入れるため、入室したらもう片方の入口doorの鍵も閉めるのだが、用が済んだ後に開け忘れるともう一人がbathroomに入れなくなってしまう。 この鍵の開け忘れが原因の姉妹喧嘩は、二人にとって日常茶飯事だった。 顔を洗い、歯を磨いて、濡らした掌で髪を簡単に整えた。 Mollyの朝のroutineに、着替えは含まれなかった。 何故なら、Mollyは毎晩翌日外出する服を着てから就寝するからだった。 身だしなみが整ったら、2つのdoorを忘れずに開錠し、いったん自室に戻ってbackpackを手に取り、寝ていた時と同じgreyのsweat hoodieとsweat pantsで部屋から出ていった。

Parlour-Morning Chat

ザクッ。 kitchenにいるMollyの父、Roald Snowballが朝食のbauruを包丁で切る音がした。 Mollyの朝食は、Roaldが作ったbauruと決まっていた。 それを毎朝通学bus内でを食べるのだ。 中身が毎日変わるので、いつも楽しみにしていた。 bauruに挟む具に関して、父はかなりradicalなcreatorと言えた。 chili con carneや、餃子が入っていたこともあった。 特に餡子は革新的だったとMollyは思っていた。 Snowball家の階段は、二階から直接parlourに続いていた。 Mollyはparlourに入ってすぐ、父が自分よりもかなり早く起床したことがわかった。 open kitchenでMollyの朝食の準備をしてくれているRoaldが、釣りに行く服装をしていたからだ。 それに反し、母親は早起きなのか徹夜明けなのかわからなかった。 母、Sophie SnowballはMollyとは色違いのpinkのsweat hoodieとpantsでsofaに深く座り、熱心に海外dramaを観ていた。 微かにalcoholの匂いがしたので、brandy入りの紅茶を飲んだのだろう。 tableに空のteacupがあった。 夫婦は人生を謳歌していた。 Snowball家の”parlour”は、living roomとdining roomとkitchenが一緒になった、言うならばfamily roomなのだが、この家をMollyの家族に紹介した不動産屋がこの部屋をparlourと呼んでいたことから、Snowball家も同じように呼んでいた。 kitchenの奥にはpantryも兼ねたsculleryがあって使い勝手が良く、家族はこの家を気に入っていた。 夫婦はMollyに気が付くと声をかけた。 「おはよう、Molly」 「おはよう、Molly」 Mollyも「おはよう」と応え、kitchen counterに寄りかかってRoaldが焼き立てのbauruをlunch bagに入れてくれるのを待った。 Sophieが声をかけてきた。 Sophie「今日も早いね、Molly」 Molly「うん。早く学習室に行っていつも使ってる席を取らないといけないんだ。昨日からprogramを走らせたままだから、わたし達より先に着いた誰かがうっかり止めちゃったら一晩の作業が台無しになっちゃうから」 Sophie「mamaにはよくわからないけど、大事なことなのね」 Molly「そうだよ。今日こそ”世紀の発見”だよ。今晩のニュースで報道されるかもしれないよ」 Sophie「世紀の発見とは、大層ね。mamaも若い時にIg Nobel賞を目指したことあるのよ。がんばってね、Molly」 Mollyは、自分達が目指してるのはIg Nobelとはだいぶ違うんだけどな、と思いつつも、優しく応じた。 Molly「うん。ありがとう。帰り遅くなるけど、Daddy、夜もbauru焼いておいてもらえたら嬉しいな。夜食に食べたい」 Roald「もちろんだよ。wrapして置いておくよ。けど、無理しちゃだめだぞ」 Molly「ありがとう。わかってる」 Roald「今日も帰りが遅いんだな。papaとbuckecaはいつやってくれるんだい。新弾で新しいdeck作ったから相手してくれよ」 Molly「ごめん。今日は無理かな。 いま、ToTに選ばれるかどうかの瀬戸際なんだ」 Roald「Team of Teamsかい?」 Molly「うん。2週間後わたし達のteamがToTに選ばれてわたしがNASAのinternが決まったら必ず付き合うよ」 winkするRoaldからlunch bagを受け取り、Mollyは玄関に向かった。 その背中にRoaldは問いかけた。 Roald「何か探し物かい?」 振り返らずに答えた。 Molly「そう。ETだよ」 Bang 玄関のdoorが閉まる音。 Roald「ET?」 TVでCMが流れた。 NA「Bucket Monster, 略してBuckémon!」 Bikachu「Bikachu!」

Bus-Bauru

早朝一巡目の巡回通学busに乗る学生は少なく、車内の座席はほとんど空いていたが、MollyはTodと二人席にお互いくっつくように座っていた。 TodはMollyより2歳年下の14歳だが、卒業に必要な単位は全て取得済みで大学院への進学が決まっていた。 賢くて優しい少年だった。 Uniのある郊外に向かうにつれ、車窓から見える住宅の数が減り、それに反比例してTexasの自然の豊かさが増してきた。 Texasには砂漠や荒野の印象を持つ人が多いが、実際は山紫水明、風光明媚な土地だ。 Mollyは父が作ったbauruを頬張っていた。 中の具は白身の魚だったが、種類まではわからなかった。 脂がのって美味しかった。 ナマズだろうか。 Todが沈黙を破った。 Tod「僕、注目されるの嫌いなんだよ」 Molly「Miaのお陰でTodも本気になってくれてよかったよ」 Tod「世界中から届くmessageでGizmoが鳴り止まないんだよ」 Molly「後に退けないね」 Mollyはbauruを割ってTodにも薦めたが、Todは黙ったまま掌で遠慮を示した。 Tod「君がinternに選べれるadvantageになると思って僕は手伝うって言ったんだ」 Mollyの夢がNASAで働く研究者になることであることを、幼馴染であるTodは10年以上前から知っていた。 TodはMollyの夢の実現のため、全力で協力したいと思っていた。 Molly「もうわたしだけじゃなくて世界中の夢がTodにかかってるのよ」 Tod「Miaはいいよ。注目を集めるのが仕事みたいなものだし。嫌だなぁ、色々言われるんだろうなあ」 Molly「ダメだって。失敗を想像してるとそういう結果になるんだよ」 Tod「priming effectのこと?それともNapoleon Hillの”思考は現実化する”ってやつ? それか、東洋の”kotodama”かな。同じ東洋思想なら、野中郁次郎の”失敗の本質”を僕は教科書にするよ。最悪のcaseを想定して行動しなければ」 Mollyが遮った。「その最悪のcaseは起こらないよ。今日は見つかる。見つかるって信じてる。今日が素晴らしい1日になるって、朝から猛烈に感じてるし」 Tod「大丈夫かな。もうoccultismじゃないの、それ」 Molly「あら。occultismと科学の近似性については考古学者のTodd教授の方がお詳しいじゃないの?」 Tod「それは誤解だよ。僕の考古学へのapproachはoccultismとは全く異なるんだよ。常識に囚われない新しいやり方を模索しているだけだ」 Molly「常識じゃないなら非常識じゃない?益々occultism臭がするなあ」 そう言うとMollyは体を寄せTodの匂いを嗅いだ。 TodはMollyを押し返して言った。 Tod「いや、まず”常識”を”真実”と取り違えては駄目なんだよ」 Molly「あ、なんかまた難しいこと言おうとしてるな」 Tod「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のcollectionである」 Molly「誰が言ったの?」 Tod「Albert Einstein」 Mollyは、shrugして降参を示すしかなかった。 この14歳と口論したところで敵わないことはわかりきっていた。 それを見たTodもため息をついた。 Tod「そもそも、あの時Miaがlive配信なんかしなければよかったんだよ」

Auditorium-Team A

更に1週間前。 Uniのすり鉢型小講堂。 中央の講壇を中心に、扇状の傾斜に聴講席が並んでいる。 MiaがMollyの隣の席で、chewing gamを膨らせている。 Somebody, stop me! 風船が割れて、有名な映画の台詞が鳴り響いた。 聴講席の学生達の注目がMiaに集中するが、Miaの顔に引っ付いたchewing gumを見て、子供達の間で流行しているScreaGumだとわかると全員視線を壇上に戻した。 壇上で 発表を行なっていたTeam Aも手を止め、迷惑そうにMiaの方を見ていたが、Miaが愛想笑いで詫びる表情を見せると、発表は再開された。 NASAの現役職員でもあるRyan Ahlberg教授のclass”STEM IV”は人気があり、この日も実習生だけでなく聴講生の出席も多かった。 150席程度ある聴講席の半分以上が老若男女の学生で埋まってた。 聴講席最上部にはbusiness suitの二人組が学生の言動に目を光らせていた。 彼らはAP、Assessment Panelだった。 実習生の成績を査定する評価委員だ。 評価に客観性を持たせると同時に、講師には研究と教育に集中させる為、UniはAssessment Panel Systemを導入していた。 実習生は発表の内容はもちろん、聴講態度や質疑応答の内容など、一挙手一投足を常に査定された。 その為、進学を志す学生やMollyのようにinternの推薦を望む学生は、普段の講義から一分たりとも気が抜けなかった。 APに評価され、Uniship Scoreを積み上げる必要があった。 聴講席には3人まとまって着席しているgroupがいくつかいるが、彼らは今日の授業で自分達が考えた研究themeの発表を行う実習生達だった。 各々のgroupは、競争意識からお互い少しづつ距離を置いて着席していた。 団結力を高める為、揃いのT-shirtを着るgroupもいた。 5組目の発表であるTeam Aは、presentationを終えようとしていた。 Molly達と今年のToTを競っているOlga Cohen、Caleb Chamitoff、Harvey Orrの3人である。 leaderのOlgaが締め括る。 Olga「以上、このように我々Team Aは、太陽系外惑星の探索方法の一つ”transit法”の検証を行いたいと思います」 聴講席から拍手が起こった。 学生に混じって聴講席に座っていた教授が立ち上がり、階段を降りながら話し始める。 Ryan「うん。いいと思う。授業でも触れたけど、惑星捜索は天文学実習の基本なので、みんなも是非一度は挑戦して欲しい」 教授は聴講席の階段を最後まで降りると講壇には上がらずに聴講席の方に振り返って話を続けた。 pocketから自分のGizmoを取り出し操作する。 大型screenに投影されていた映像が、Team Aの発表用slideから教授のGizmoの画面に切り替わり、file listが映し出された。 天文学関連の論文や資料が並ぶlistから、”FixedStars&Planets_Basic_230221RYNa.pptx”というfileを選択し説明を始めた。 Ryan「Alright. ここで一旦基本に戻ろうか。この宇宙全体の星の数について、みんなは考えたことあるかな。月や火星、金星など太陽系の星を除けば、夜空に輝く星々、これらは全て太陽と同様自ら輝くガス体の天体、つまり恒星だ。恒星の数は、この銀河だけで2,000億とも4,000億とも言われている。はっきりとはわかっていないのだけど、とにかくたくさんだ」 実習生にとっては基礎的な知識だが、今日は聴講生が多いことを配慮しての説明だった。 Ryan「では、銀河は全宇宙にどれくらいの数あるのだろう。これも”莫大”だ。数千億個と言われることもあるし、2006年の研究では2兆個とも言われている。随分幅があるけど、いずれにせよ気が遠くなるような数だ」 聴講者にslideを読ませるため、一拍おく。 Ryan「1つの銀河が含む恒星の数が、少なく見積もって2000億。そして、銀河の数が宇宙全体で1000億だとすると、宇宙全体の恒星の数は、2千億(200,000,000,000) 掛ける1千億(100,000,000,000)。なんと、0が22個も必要な数だけ存在することになる。まさに天文学的数字だ」 Mia「Ryan、この話好きだよね」 MollyとTodも同じことを思ったが、Miaの言葉にあまり際立った反応はしなかった。 二人ともこの話を聞くのが好きなのだ。 視線を動かさずに黙ったまま頷いた。 教授は話を続けた。 Ryan「恒星の数は」 Ryan/Mia「地球中の海岸の砂粒の総数より多い」 声真似したMiaが見事にハモってみせた。 Mollyも笑いを堪えて、デスクの下でMiaの膝を軽く叩いた。 教授は続ける。 Ryan「さて、このように、恒星だけでも夥しい数が存在するんだけど、惑星はどうだろうか。惑星は、恒星に比べると遥かに暗いので見つけにくい。この点については、”恒星のように光っていないから見つけにくい”と言いいたいところだけどね。実際は、たしかに恒星のように核融合はしてないのだけど、厳密に言うと惑星も熱放射はするから赤外線で”自ら輝いている”と言える。ややこしいけど。まあとにかく我々人類が夜空に見る星々は月や火星や金星などの太陽系内の惑星を除いて全て恒星だ。惑星は一つもない。それ故長い間人類にとって、特に太古の人類にとって、惑星は謎多き天体だった。人類は、誕生の時から何万年もの間恒星を目にしてきたけど、最初の太陽系外惑星の発見は、なんと1995年だ。つまり人類は、初めの恒星の発見から、初めの惑星の発見まで、数万年もの年月がかかったんだね」 この事実は聴講生の多くにも意外と知られていなかった。 知られていないというより、意識されていない、というべきかも知れない。 感嘆の声を出す聴講生もいた。 Ryan「それでも21世紀の初頭には既に300を超える太陽系外惑星が発見されていた。最初の惑星の発見から数十年で300だよ?科学の力だ。素晴らしいよね」 講壇の上に昇る教授。 Ryan「けど、ちょっと待って。夜空に見える恒星は、場所や条件に依るけど、肉眼でも6,000から8,000くらいある。それに比べたら、人類が見つけた惑星の数のなんと少ないことか」 Mia 「この辺からengineがかかるんだよね」 MollyとTodも大きく頷いて同意を示す。 Ryan「惑星を持つ恒星の割合はどれくらいだろうか」 講壇上のOlgaが挙手と共に答える。 Olga「Frank Drakeによると、”50%”と言えます」 教授は笑顔で頷いて続けた。 Ryan 「Professor Frank Donald Drake。僕も敬愛しているよ。ではDrake教授繋がりでもう一問。Drake教授の推測では、惑星を持つ恒星が生命存続可能な惑星を持つ場合その平均数はいくつとしたか、誰か覚えてるかな」 MiaがMollyを突き、回答を促すが、Mollyが遠慮がちに挙手しようとした時にはOlgaが再び答えてしまった。 Olga「Drake教授は”2”と推測しました」 Ryan「うん。”Drakeの方程式”に精通してるね。素晴らしい。」 Miaが悔しそうに背後に振り返り、AP(前述の評価委員)の動きを確認した。 Assessment Panelの二人がお互いの視線を合わせて頷いているところを見ると、Olgaが加点を得たのは明らかだった。 Miaは姿勢を戻し、Mollyに向かって「もっと積極的にいけ」の表情を見せた。 Mollyは苦笑い。 Ryan「”Frank Drakeの方程式”、ワクワクするよね。僕も若い時に夢中になったよ。せっかくだから少し寄り道しようか」 Mia「来た、来た。Ryan Ahlberg教授の真骨頂。寄り道と言うより遠回り」 Miaが両手を使ってmotorbikeのhandleを握るposeを取った。 Ryan「1961年に提唱されたDrakeの方程式は、”我々の銀河系に存在し、人類とcontactする可能性がある地球外文明の数”を推定する式だ」 Mia「Vroom, vroom」 Miaがhandleを握る右手でengineを吹かすような仕草をやってみせた。 すると、Miaの周辺が騒がしいことに壇上の3人が気が付き、訝しむ表情を見せた。 教授はpageを送り、Drakeの方程式の解説slideを表示した。 slide上部に”我々の銀河系に存在し人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数Nを算出する”と書かれていた。 中央に方程式「N = R × fp × ne × fl × fi × fc × L」が 、下部にはそれぞれの項が何を示しているかの説明が付記されていた。 R:銀河系で1年間に誕生する恒星の平均数 fp:惑星系を有する恒星の割合 ne:惑星を持つ恒星が持つ生命誕生に適した環境がある惑星の数 fl:生命誕生可能な惑星に生命が誕生する確率 fi:その生命が知的生物に進化する確率 fc:その知的生物が他の星と通信を行う確率 L:通信を行うような文明の存続期間 Ryan「Frank Drakeは、”fp”を”0.5”、neを”2”と推定したんだよね。0.5*2だから、1になる。要するにDrake教授は、恒星一つにつき生命が誕生する可能性がある環境を持つ惑星が一つは存在すると推測したんだよね。念の為説明を加えると、ここでは”生命が誕生可能な惑星”という条件が付いているので、生命が誕生”不可能”な惑星を含めた数はそれより多いことになる。もちろん、Drakeの推定の正否や正確性については議論の余地があるけど、僕が言いたいのは、恒星と同様、宇宙には無数の惑星が存在するはずなのに、そのほとんだがまだ見つかっていない、ということなんだ」 Mia「finale来る~ぅ」 Ryan「実に残念だ。惑星は、もっと注目されるべきだと思う」 俯いて悲しそうな教授。 Ryan「考えてみて。この太陽系だけでも、8つの惑星があるんだよ」 天を仰ぎ、両腕を拡げる。 Molly達3人も、教授の高揚に呼応するように聴講席で前のめりになる。 Ryan「僕は思うんだ」 Ryan/Mia/Molly/Tod「惑星は、浪漫だ」 今度はMollyとTodもハモった。 3人は破顔し声を出して笑った。 これがあらぬ誤解を生んだ。 Team Aは、発表の流れで登壇したままの状態で教授の解説が始まってしまい、所在なく壇上で待ち惚け状態だったのだが、Molly達Team Bがそんな自分達を嘲笑したかのように思ったのだ。 Olgaを除く二人が壇上のTeam Aだけに聞こえるくらいの小声で不満を漏らした。 Harvey「くっそ。あいつら何笑ってるんだ」 Caleb「負け犬どもが」 教授は陶酔したように目を瞑っていてそんな彼らには皆目気が付いていなかった。 言いたいことを言い切り、すっきりしたような表情になった。 講壇で立たされたままのTeam Aの方に振り返り、授業を再開した。 Ryan「太陽系外惑星の探索方法はいくつかあるけど、Mr. Chamitoff、もう一度さっきのslideを映してくれるかい」 Team Aの3人は、Molly達Team Bを憎々しげに睨んでいたが、教授に急に話し掛けられたCalebが慌てて笑顔を作り、自分のGizmoを操作してslideを表示した。 Ryan「太陽系外惑星探索の代表的な手法がこのtransit法だ。Ms. Cohen、君のさっきの説明は簡潔でとてもよかったよ。もう一度お願いできるかな」 Olgaが誇らしげに一歩前に出た。 Olga 「恒星を観測していると、地球とその恒星の間を惑星が通過、つまりtransitした際に生じる減光を観測することがあります。この周期的な光度変化を表す光度曲線を分析することで、惑星を持つ恒星を発見することができます」 Ryan「本当に新発見するつもりで、真剣に取り組んで欲しい。可能なはずなので」 Olga「もちろんです」 聴講席が「おぉ」と湧いた。発表5組目にして、初めて実習themeが認められたteamが現れたからだ。彼らの前に発表した4組は全て、”要修正”か”不合格”となっていた。 Ryan「以前の授業でも話したけど、transit法のconsは理解してるよね」 Olga「はい。transit法には主に二つの欠点があります。一つ目はそもそも観測の対象となる惑星の軌道が主星となる恒星面上である必要があること。もう一つは、誤検出率の高さです。具体的には、宇宙には光度が変動する天体も多く、transit惑星に起因しない光度変動の可能性もあることを考慮する必要があります」 Ryan「その通り。発見できたとしても別の方法による追加検証が必要となる。そこまで行けることを信じてるよ。追加検証の方法も想定してるかな」 Olga「ありがとうございます。doppler分光法で行うつもりです」 教授は満足そうに頷いた。 Miaは面白くなさそう。 Mia「Todに相談してthemeを決めたくせに、一言のお礼もないのな。恩知らずが」 Miaは性格の振り幅が大きい。甘口と辛口で言うと、いまは辛口modeのようだ。 Todは苦笑いするしかなかった。 Molly「まあまあ。Todの頭脳は人類みんなの物だから」 Tod「彼らのteamはtop scorerとしてこの一年ToT raceを独走中だ。あの3人がNASA行きのticketを握りかけていると言える。難易度の高い研究themeに挑んで失敗するriskを取るより、難易度が低いthemeで及第点さえ取れれば、そのまま彼らがこのraceの勝者になる。僕らTeam Bが逆転するためには、僕らが難易度の高いthemeで実習を成功させてscoreで上回る必要があるから、彼らには成功したとしても加点の少ない温めのthemeに臨んでもらう必要があった。だから、彼らからthemeの相談を受けた時に、transit法の検証を薦めたんだ。騙した訳でも、嘘をついた訳でもなく、彼らの「難易度は低く及第点を取れるtheme」というrequestに応じた答えとして教えたんだから、至ってfairだよ」 Mia「く~、主は策士じゃのぅ」 Mollyは、NASAに行くという自分の夢のために二人が協力してくれていることを嬉しく思った。 壇上のRyanが続けた。 Ryan「ちなみに、Drakeの推定によると、”N”、つまり”人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数”、がいくつになるか、知ってる人いるかな」 Olgaが解答を思い出そうと考え込むのを見たMiaが、すかさずMollyの腕を掴み、無理やり挙手させた。 Mia「はい」 Molly 「Hey…」 教授がMollyに視線と笑顔を送る。 Mollyの視界にTeam Aの3人の親の仇でも見るような表情が入り困惑したが、教授の笑顔と交互に見て、笑顔に誘われるように回答した。 Molly「あ。えーと、10です」 Ryan「ここにもう一人Drake Childrenがいた。僕は嬉しいよ」 MiaはAPがMollyの活躍を見逃してないか、抜け目なく確認した。 APがtabletに入力しているのが見えた。 大丈夫そうだ。 Ryan「太陽系外惑星の発見方法は、今話に出たtransit法やdoppler分光法の他にもいくつかある。最も古くからあるのがdoppler法、更にastrometric法、重力microlensing法、pulsar-timing法、更に明るい星の光を隠して惑星を撮像する直接撮像法、その後には差分撮像法や偏光法など新たな方法も開発されている。実に多様だ。興味を持って自分で調べてみると面白いと思うよ。我が校が誇る素晴らしい施設を是非活用して欲しい」 学生の多くがslideから単語を書き写すのに必死だ。 Ryan「次、Team B行こうか。みなさん、Team Aに拍手を」 Molly、Tod、Miaが聴講席から壇上に進んだ。 入れ違いでOlga、Caleb、HarveyのTeam Aが降壇するが、Team Bに向けた視線には憎悪が込められていた。

Auditorium-Team B

speakerとなるMollyが壇上の中央に立ち、MiaとTodはMollyより少し後方の傍に立った。 発表資料の操作はTodが行う。 screenにtitle slideが映し出された。 Team B Molly Snowball Mia Marley aka Caramelizer 6©︎ Tod Todd ”Caramelizer 6” はMiaの芸名だった。 この部分だけdesignされたlogoが使われていて、やけに目立っていた。 ご丁寧に“6”の右上にはcopy rightを示す”©︎”も付いていた。 Miaは幼少時から子役として活躍する俳優であり、KOLでもあった。 実際、Mia見たさに聴講している学生が一定数いるのが明らかだった。 Miaが登壇しただけで、聴講者の一部がザワついた。 これまで発表を行った5組を見る限り、speaker以外の学生は壇上に立つと居心地が悪そうだった。 これと言ってやることがないので手持ち無沙汰で、誰もが落ち着かない様子だった。 しかし、TodとMiaは違った。 Todは、年少にも関わらず妙に落ち着いていて泰然自若。 直立不動だった。 視線も真っ直ぐだが、聴講席を見ているというより自分と聴講席との間の空間を見ているかのように無表情だった。 何か、別の事を考えているのかも知れない。 Miaは、視線を浴びることには慣れていた。 まるで写真撮影に応じるred carpetのfilm starのようだった。 両腕を胸の前で交差し、左右三本ずつ指を立てる”Caramelizer 6 posture”をとっていた。 何度も角度を変えてpostureを決めて小講堂を沸かせ、仕舞いには自分のGizmoを取り出してlive配信を始めた。 すると、聴講席に戻ったTeam AのCalebのGizmoがjingleを鳴らした。 Miaのlive配信の開始を知らせる通知だった。 Harvey「C’mon. Kay、お前もあいつのfanかよ!?」 Caleb「違うって。子供の頃に観ててそのままになってるだけだ」 Harvey「それをfanって言うんだろ。投げ銭してるんじゃないだろうな?」 Caleb「そんなはずないだろ」 Harvey「じゃあ、thumb downしてやれよ」 不本意そうにGizmoを操作するCaleb。 間、髪容れず壇上のMiaのGizmoが”Boo”の音を鳴らした。 Miaは怪訝な表情で画面を確認した。 “K for the KING”というuserが低評価したのに気が付いた。 Miaは直感的に訝しんだ表情で聴講席を見渡した。 中央に立つMollyがpresentationを切り出した。 Molly「では、Team Bの発表を始めます」 MollyがTodの方を向いて頷くと、Todがslideのpageを送った。 Molly「Team Bの研究themeは”地球外知的生命の探索”です」 screenにthemeが表示された。 Theme of Team B SETI Search for Extra Terrestrial Intelligence 小講堂が騒ついた。 教授も好奇の表情になっている。 Harveyが皮肉を込めた口調で野次を飛ばす。 Harvey「夢がある!」 Mollyは動じることなく説明を続けた。 Molly「具体的には、SETI@Homeを再実行します」 Slideが進み、 Our Challenge Redo SETI@home の文字が表示される。 聴講者が更に騒ついた。 評価委員の二人も議論を始めたようだった。 Olgaが壇上に向かって声を放った。 Olga「SETI@homeは2000年代に完了したはず」 Molly「はい。正確には完了ではなく休止です。2004年、より汎用的なopen source network system、Berkeley Open Infrastructure for Network Computing、通称BOINCに移行し、そして2005年12月15日にSETI@homeの運用は終了しました。BOINCをplatformとした運用も、2020年3月31日をもって休止しました」 Harvey「”再実行”って、パクリじゃないのか!」 Mollyが答えようとすると教授が遮った。 Ryan「面白い議論になりそうだね。今日は多様な聴講者がいるし、Molly、SETIやSETI@homeの基本的な説明をみなさんにしてもらってもいいかな」 Molly「はい」 再びTodの方を向き頷いた。 事前に用意した説明用のslideを表示した。 Molly「ご存じの方も多いと思いますが、SETIは”Search for Extra Terrestrial Intelligence”の略です。地球外に存在するであろう知的生命体、つまりETIや、その文明を発見する活動全般を指します。1960年代に始まり世界各地で様々なprojectが実施されてきました」 Molly「SETIには大きく分けると二種類、Active SETIとPassive SETIがあります。前者が地球から積極的に地球外に向けてmessageを送信するのに対し、後者はその逆に地球外知的生命体が発信するmessageや、彼らの存在の痕跡を観測することでETIを探索する受動的なapproachです。SETIの主流となっています」 Molly「そのPassive SETIが世界で初めて本格的に行われたのが、先程も言及のあったFrank Drake教授が主導したProject Ozmaです。1960年、当時America国立電波天文台に所属していたDrake教授は、地球から近い2つの恒星を対象に30日間の観測を行いました。その後も、SERENDIP、MANIA、FENIX、OZAP、SENTINEL、BETAなど、世界中で100件以上のSETI関連projectが実施されています」 「その中で、SETI@homeは、Puerto RicoのArecibo天文台が受信した宇宙から届く電波を世界中の有志による分散computingで解析するprojectです。無償配布された解析client softwareをinstallしたcomputerをnetwork化し計算処理能力を高めることで、膨大な受信dataの解析を可能にしました。1999年に始まり、発表された当初から世界中の天文学fanが夢中になって参加し、その数は200万人を超えました。後年、先程説明した通りBOINCに移行し、2020年3月31日作業は完全に休止しました」 Olga「SETI@homeでは結局ETIを見つけることはできなかった。彼らの尽力によって明快な結論が出ているはず。お前達はそれを否定するのか?」 Molly「そうです」 Mollyがあまりにきっぱりと認めたのでOlgaらは呆れて冷笑した。 Harvey「何様だ!」 Molly「SETI@homeにはいくつかの問題点があります。問題点と言うか、改善可能な点が。今だからこそできる方法で、より明白な結果を導き出せるはずです」 Harvey「200万人で行ったprojectを3人だけでやり直すっていうのか?」 Mollyは落ち着いた表情のまま、改めてTodに別のslideを表示するよう視線を送った。 Molly「SETI@homeをredoすべき根拠はいくつかありますが、その前にSETI@homeの大まかな仕組みを説明します。SETI@homeが始まった1995年当時、既に世界中でpersonal computerが普及していましたが、現在と同様、大半のPCは四六時中full powerで稼働していた訳ではありませんでした。例えば、userが寝ている間などはほとんど役に立っていなかったのです。このような世界中のcomputerの余剰計算能力を活用して、Arecibo天文台が受信した膨大なdataの分析を分業で行うのがSETI@homeの特徴です。先程も言及した通り、参加者は自分のpersonal computerをclient deviceとしてSETI@homeのsoftwareをinstallし、host serverに接続します。そして、夜中などPCを使っていない時間を活用してETI探しに参加するのです。そのprocessは簡潔にまとめると次の通りです。」 Mollyはscreenに表示されたSlideの内容を読み上げた。 #1: serverから配信される解析前の観測dataの断片を”work unit”として受信 #2: 演算処理=work unitの解析 #3: 解析結果をserverに返信 続けて、 Molly「Work unitは現在もarchiveされていて閲覧可能なので、わたし達Team Bも同じdataを使用します。改善するのは#2の工程です。独自開発した解析programを使用します」 Harvey「誰が開発したんだ。qualityを担保できるのか」 Molly「開発者は、ここにいるTod Toddです」 歓声が聴講生から漏れた。 Todならできそうと誰もが思った。 Todが一歩前に出てspeaker役を引き継いだ。 Tod「SETI@homeのsoftwareが行う処理は、受信dataに含まれるnoiseを除去して人為的な電波の痕跡を見つけ出すことを目的としますが、これが厄介なんです。未知のETIがどんな信号を送っているか、あるいはどんな電波を意図に反して発信しているか、人類には知る由がないのに、noiseか否かを判断しなければなりません。結果を見れば明らかですが、SETI@homeからは”全てがnoiseだった”と言う結果しか得られませんでした。僕らはこの結果がどうも腑に落ちないのです。何故なら、noiseとして処理されたdataにこそ、本物のETIからの信号が含まれていたかもしれない、と思うのです。見落としたか、誤ってnoiseとして処理されたか、そういった事が起こり得た、と思っています」 Mia「ほんとは見つかってたのに隠蔽されたとかね」 Miaが悪戯っぽく笑った。 Todは取り合わず続けた。 Tod「そこで、僕らは当時のsoftwareをsource codeから見直して、もっとsimpleに、noiseではない可能性を拡げて確かめられるlogicに開発し直しました。実は、このlogic開発には半日もかかってません。何故かと言うと、元のsoftwareの方がずっと複雑なのです。当時のclient deviceの演算能力が低かったせいです。SETI@homeの分散computingは当時のsupercomputer並みの演算能力を得る事ができましたが、各々のclient deviceの処理能力には限界があったので、それを補う煩瑣なlogicをsoftware側で処理する必要があったのです」 Molly「redoすべき根拠は、もう一つあります。SETI@homeでは、不正が多発したのです」 Harvey「馬鹿言うな。SETI@homeはvolunteerによる無償のprojectのはず。報酬が絡んでた訳でもないし、不正して誰の得になるんだ」 Molly「”承認欲求”のせいです。SETI@homeでは、projectへの貢献度に応じたuser rankingを公表していたのです。より多くのwork unitを処理することでranking上位者になることができたのです。それだけ有識者の間でSETI@homeへの注目度が高かったとも言えます。不正を働いてでもこの偉大なprojectに名を残そうとする人がいたのは確かです」 Tod「もちろん、不正を検出する仕組みも用意されていました。同じwork unitを複数のuserに配布して結果が合致するか無矛盾性を確かめたのです。それでも、SETI@homeの解析結果の10%が不正によるものだったという記述も残ってます。残念ですが」 Molly「SETI@homeは、人類史最大規模の世界的分散computingとして、素晴らしい実績を残しました。当時としては著しく画期的だったと言えます。それでも、BOINC移行直前の2004年1月の時点の計算能力は、たった63TeraFLOPSです。BOINC移行後も処理能力は向上しましたが、2009年6月現在で約600TeraFLOPSでした。現在の技術と比べるとその差は歴然です。最新computerであれば、この程度の演算は”分散”で行う必要すらありません」 Tod「それから、過去の観測結果をその後の技術でredoした成功例として、2018年のGoogleの実例があります」 Harveyが苦虫を潰したような表情になった。 この事例は知っていた。 GoogleがAIを使ってKepler宇宙望遠鏡の過去dataから惑星を見つけたことがあった。 Tod「GoogleがNASAのKepler宇宙望遠鏡が収集した観察dataをAIを使って再分析を行った結果、それまで人の手で分析済みとされていたdataの中から、新たに見落とされていた惑星を発見することができました」 Harvey「それは惑星探索だからできたことだ。地球外知的生命体探索では無理に決まってる」 言ってから、しまったという表情になった。 これでは、自分達Team Aの演習ThemeよりTeam Bのそれの方が難易度が高いことを認めたことになる。 すかさずMiaがしてやったりの表情で言い放った。 Mia「その通り。わたし達のthemeは、惑星探索よりもはるかに困難な挑戦なのです」 Miaは言い終わると、Assessment Panelの二人にwinkすることを忘れなかった。 Harveyが小さく悪態をついた。 Harvey「クソがっ」 Tod「たしかにGoogleとKepler宇宙望遠鏡は、ETI探索ではなく惑星探索のredoの例ですが、過去の収集dataを現在の技術で再度分析することの意義はご理解いただけると思います」 聴講生同士が賛否の意見を交換し始めて、小講堂全体が喧囂となった。 忽然と教授が立ち上がり、考え込んだ表情のまま聴講席をゆっくりと歩き回り始めた。 Mia「あ、zoneに入ったね」 Ryan Ahlberg教授は考え事を始めると、学生のことはそっちのけで想いに耽ってしまう癖があった。 教授が独りごちながらコツコツと講堂内を歩き周り始めた。 Ryan「たしかに、SETI@homeの信憑性はsoftwareの解析logicへの依存が大きいな。ETI signalは星間物質によっても影響され得るし、地球とtargetとの相対運動、相対加速度も加味する必要がある。noiseと処理されたdataにETI signalが含まれていても不思議じゃない・・・」 学生達は見守るしかなかった。 Ryan「Coherent分散除去法を使ったpulse信号が・・・」「power spectrumにおけるspikeと・・・」「発信電力のGauss関数的変動・・・」 Ryan「…」 沈黙。 小講堂の全員が教授に注目していた。 Ryan「やってみよう。Just redo it.」 小講堂が沸いた。 壇上の3人が歓喜の声を上げる。 Ryan「Magmaの使用を認めるよ」 小講堂が更に湧いた。 MagmaはUniに1台しかない最速の量子computerだった。 Todの操作で資料の最後のslideが表示された。 Just redo it. Mia「被ったぁ」 HarveyがCalebのGizmoを奪い取り、低評価のthumb downを連打した。 MiaのGizmoがboo boo鳴り響いたが、歓声にかき消されてMia達は意にも介さなかった。 Ryan「SETIはとてもchallengingで難易度も高い。やり直したところでETI信号を見つけられる可能性は低いかもしれない。ただ、今回の実習では、過程を重要視したいと思う。成果はもちろんあった方が良いけど、teamで協力し、計画を立て、修正をし、goalを目指すというprocessを大切にして欲しい。かのAlbert Einsteinも言っている。”何かを学ぶのに、自分自身で経験する以上に良い方法はない”。いいかい?goalはETIの発見であって、SETI@homeのredoは手段なのだから、必要に応じて方法は途中で変えても良いよ。Magmaを使えば結果は比較的早く出るだろう。発見ができなかった場合は別の手段も検討すること」 Tod「Plan Bか」 Mia「B for Bravoってね」 Ryan「そうだ。Ms. Snowballの父上がこんなことを言ってたな。”Youth is the search for something you may never find. (青春とは、見つかるか見つからないかわからないものを探すことだ)”って」 RyanとMollyの父Roaldは、お互いに古き友人であった。 Mollyは思った。 父の「青春とは・・・」は、そんな昔からの口癖だったのか、と。 Ryan「それから、過去のprojectを再実行することをよく思わない人達もいるだろう。結果を疑ってることは明らかだからね。コソコソ隠れてやるより、この研究を公にして堂々とやるのがいいと思う」 Mia「もう知られてます」 Miaは、Gizmoの画面を教授に見せた。 Caramelizer 6のlive配信に対し、commentがすごい速度でscrollされているのが見えた。

Bus-Going School

顔を横に並べたMollyとTod。 Uni busのsheetに座ったまま二人とも無表情だった。 前を向いたままTodが言った。 Tod「あれからfollowerすごく増えたでしょ」 Molly「増えた」 Tod「どれくらい増えた?」 Molly「10万人超えてから見てない。元は100人くらいだったのに」 Tod「僕も。100万人超えてから確認してない。怖くて」 Molly「Miaの影響力すごいね」 Tod「みんなSETIの結果に興味があるんじゃなくて、Miaの私生活に関心があるだけでしょ。巻き込まないで欲しいよ」 Molly「どこかで何かの役に立つかもよ」 Tod「Uniship Scoreで逆転狙うなら、一か八かでもETI探索に挑戦するのがいいって言ったけど、結果がどうなるかは僕もわからないからね。心配だよ、僕」 Molly「覚悟の上だから、後悔してないよ」 Tod「もう1週間経ったから、残り2週間だね」 Molly「うん」 Tod「そろそろ見つけないと、Plan Bを真剣に考えないといけなくなるよ」 Mollyは”わかってる”と思ったが、声には出さなかった。 認めたら、現実味を帯びてしまうと思ったのだ。 busがUniの敷地内に入って行く。 MollyとTodがbusから降りると、Mia Marleyが手を振りながら近付いて来るのが見えた。 Miaは今日も陽気だった。 謎のdanceを踊って見せた。 Miaは二人の真ん中に入り、両腕を二人の首に回して校舎へと促した。

Cafeteria-Bikini

学生で賑わうlunch timeのcafeteria。 Mollyが打ちひしがれた表情で大きなため息をついた。 Molly「はぁぁぁ」 Mia「work unit、全部解析終わっちゃったね」 Molly「終わったわ。work unitもわたしのNASAも」 Tod「まだ終わってないよ、Plan Aが駄目だっただけだし、発表まで2週間あるよ」 Molly「はぁぁぁ」 Tod「あれだけのdataを1週間で演算しちゃうんだからMagmaすごいね」 Molly「感心してる場合じゃないじゃない。わたし達、Plan Bがないのよ」 Mia「No bravo?」 Molly「No bravo」 Tod「あの時代のSETI@homeの精度には感服するね。それがわかっただけでもやった価値はあるはずだよ」 Molly「そうかもしれないけど、”でしょうね”って思われて終わりじゃない」 Tod「すぐにPlan Bに取り掛かれば間に合うよ。時間は十分ある」 Molly「はぁぁぁ」 意気消沈するMollyの横を、Olga達Team Aの3人が通りかかった。 Harveyがニヤついた顔で自分のGizmoをMolly達に振って見せた。 Miaが何かを察して声を上げた。 Mia「あいつら!」 慌てて自分のGizmoを確認した。 HarveyからDMが届いていた。 DMの中身はnews mediaへのlinkだった。 迷わずlinkを押下するMia。 動画が再生された。 Harveyがuniの校門の前でmediaのinterviewに答えている動画だった。 Harvey「本当に感心しました。彼らには秘密の作戦があるようです。自信満々でしたよ。もしETIが見つからなかったら、3人でbikini car washを1週間やるって言ってたくらいですから。勇気ある発言にyellを送りたいと思います。頑張れ、Team B」 Tod「やられた」 Molly「bikini?!」 Mia「なんだ。楽しそうじゃん」 Molly「楽しくない!」 Mia「bikiniいまも着てるし」 T-shirtの裾を捲ってTodに着用しているbikiniを見せるMia。 Bikiniには左右に跨り漢字で「眼」「福」 と書かれていた。 Molly「そういう問題じゃない!取り消さないと!!」 Tod「もうとっくにshareされてるよ。否定するのは探索が失敗してからでも遅くないよ。まずはPlan Bを考えないと」 Molly「そうだね。落ち着こう」 Mia「慌ててるのMollyだけだよ」 少し冷静になるMolly。 かといってすぐに代替案は思い付かない。 沈黙する3人。 重い空気になる。 重いtoneで口を開いたMolly。 Molly「このまま失敗して、わたしはNASAには行かない方がいいのかも・・・」 Tod「どうしたんだよ、Molly。君らしくないじゃないか」 Mia「そうだよ、Molly。NASAに行って宇宙の研究をするのが小さい時からの夢だったじゃん!」 Molly「わたしの夢は、父が諦めた夢でもあるから・・・」 幼馴染のTodとMiaは知っていた。 Mollyの父、RoaldはかつてNASAの職員だったのだ。 Mollyは幼少期に小児白血病を患っていた。 血液の癌である。 Mollyの両親はそれぞれの仕事を辞めてMollyの看病に専念した。 二人は夭折の恐怖と闘いながら懸命にMollyを看病し、Mollyは現在の健康な身体を取り戻したのだった。 Molly「わたし、わからないんだ。両親は病気のわたしのために自分の夢を諦めてわたしの看病をしてくれた。今だってわたしがNASAに行けるように毎日応援してくれてる。それなのに、わたし、NASAに行けなかったらどうしよう?両親にも、TodとMiaにも、申し訳ないよ・・・」 TodとMiaは、闘病中のMollyに何度も会いに行っていたので、Mollyの両親の苦労を痛いほど知っていた。 Molly「逆にね、もしわたしがNASAに行けたとして、それを父は喜んでくれるかな?自分は夢を諦めたのに、なんでこの子だけって思わないかな?」 Tod「そんなこと思う訳ないよ!」 Mia「そうだよ!Mollyのご両親は、one hundred percent Mollyの味方だよ!」 Mollyが助けを求めるようにTodとMiaを見た。 Mollyの表情からは、いつもの明るさが消えていた。 Tod「僕は知ってるよ。Mollyのお父さんは、本当に立派な学者だった。だから、学問は一人だけで可能なものではなくて、世代を超えて紡いでいくものだって知っているはずだよ。こうやって、実の父娘で繋いでいくなんて、こんな素敵なことはないじゃないか!」 Mia「それにまだ失敗って決まった訳じゃないし。これまでだって三人で不可能を可能にしてきたじゃん!病気の時だってそう。あたしが初めての映画で台詞をちっとも覚えられなかった時もそう。Todが間違ってお母さんの下着で学校に来ちゃった時だってそう。三人でなんとかしたじゃん!」 Tod「その話はやめて欲しい・・・」 Mollyの表情が、ふわりと柔らかくなった。 Molly「うん。そうだよね。わたしがウジウジしてる場合じゃないね。ごめん。Plan Bを考えなきゃ」 Mollyは気を取り直し、二人を見つめた。 表情に活力が戻ってきたが、やはりすぐには良い案を思い浮かばなかった。 再び重い空気になりかけたその時、Miaが口を開いた。 Mia「そうだ、気分転換しよう」 Tod「気分転換って?」 Mia「camp行こうよ。最近行ってないじゃん」 Molly「こんな時にcamp?」 Mia「行こうよ。野営が一番気持ちいい季節だよ」 Molly「camp行ったら遊んじゃうじゃん」 Mia「遊びにいくんだよ」 Molly「遊んでる場合じゃないのよ」 Mia「Mollyは遊んでいったん頭の中を空っぽにした方がいいんだよ。炭酸が抜けて不味くなったぬるいbeerがglassに残ってたら新鮮なbeer注げないじゃん」 Molly「うまいこと言わないで」 Tod「いや、一理あるよ。phytoncide、いいかも知れない」 Molly「futon kid?なにそれ?」 Tod「phytoncideだよ。”phyto”は”植物”で、”cide”は”殺す”って意味の」 Molly「ん?」 Mollyの頭に”genocide”や”insecticide”など不吉な単語が浮かんだ。 Mia「植物殺すんじゃないよね?」 Tod「もちろん違うよ。phytoncideは樹木が傷付けられた時などに発して周囲の細菌を殺傷したり防衛の効果がある物質だよ。人間に対しては副交感神経を刺激して、精神安定とか疲労回復とか、stress解消にいいって言われてる。森林に入ると独特な香りがするでしょ?あれはphytoncideの成分のせいだとも言われてるよ。森林浴の効果の秘密らしいよ」 Mia「じゃあそのfuton kid浴びに行こう。わたし車出すから拾いに行くね」 Molly「えっ?今日行くの?」 Mia「そうだよ。Plan Bは森にあるのよ。わたし達はそれを拾いに行くだけ」 Tod「もっともらしく言うなぁ」 Mia 「じゃあ、いつものBeacon Hillね。まだ日の入りに間に合うよ」

Parlour-Going Camp

Mollyが帰宅してparlourに入ると、Roaldがsofa tableに載せられた見たことのない機械を熱心にいじっていた。 角張った鉄の上呂のような上部と、基板やwireなどの電子部品が詰まった箱のような下部がつながった形体で、大人の上半身くらいの大きさがあった。 上部は朝顔の花のように開き下部が細くなった漏斗形状で、Mollyは大麦脱穀器のhopperに似た機械だなと思った。 Molly「ただいま。Dad、それなに?」 Roald「これは僕が若い時に友達と作った電波望遠鏡だよ。DIY電波望遠鏡。今朝MollyがET探してるって言うから思い出したんだ。僕も昔友達と天体観測したなーって。地下室にまだあると思って探したらすぐ見つかったんだけど、やっぱり色々壊れてるみたいだ。残念。いやー、けど懐かしいよ」 Roaldは愛おしそうに望遠鏡を撫でた。 友達とつけた望遠鏡の愛称だろうか。望遠鏡の筐体に手書きの文字で「Dumbo」と書いてあった。 Molly「電波望遠鏡ってDIYできるんだね」 Roald 「できるさ。まあここまで作るのには色々苦労があったんだけどね。こんな見た目でも、銀河spiral armの観察くらいお手のもんだよ」 Molly「Wow, 初めて知った」 Roald「あ、そうだ。bauru仕込んであるけど、まだ焼いてないよ。帰り、早かったね。Buckeca、できるのかい?」 Molly「ごめん、別の用事ができて。TodとMiaとcamp行ってくるね。気分を換えて作戦会議なんだ」 Mollyは思い出したように二階に駆け上がった。 階段を昇るMollyの背中を見ながら、Roaldは独りごちた。 Roald「青春っていうのは、いつだって駆け足なんだよなあ」 Roaldはsofaから立ち上がると、dinning table上の皿に載せたbauruをwrapした。 夫婦の分も仕込んであったのだが、一瞬だけ考えて全て紙袋に入れた。 Mollyは寝室で着替えと洗面道具をbackpackに詰めると、sleeping bagとpadを掴んですぐに階下に降りてきた。 Mollyに紙袋を渡すRoald。 受け取ったMollyは、袋の重さで父が3人分を渡してくれたことにすぐに気がついた。 Molly「ありがとう、Dad」 hugして頬にkissをした。 朝と同様、慌ただしく出ていく娘にRoaldは声を掛けた。 Roald「君たちの望遠鏡は誰が作ったんだい?」 Molly「Cornell大学とAmerica空軍だよ」

Beacon Hill-Camp

Beacon Hillの東側の裾にMiaのLand Cruiserを駐車し、三人は一泊のcampに必要な最低限の荷物だけを持って丘を登り始めた。 basketball一試合分くらいの時間をかけてゆっくりと歩き、三人にとってお馴染みの野営pointを目指した。 途中、川沿いを歩く区域があった。 そこには胡桃の木が自生していることを三人は知っていた。 上流に自生していた胡桃の木から落ちた実が川に流され下流にたどり着き、川沿いで繁殖したのだ。 食べられそうな実が落ちていないか、足下を注意しながら少しゆっくりと歩いた。 虫に喰われてなさそうな、落ちてから時間の経っていない実を選別して拾った。 野営pointは頂近くの岩の多い西向きの斜面に開けたswimming poolくらいの広さの平地で、岩も少なく設営に最適な場所だった。 三人が到着してbackpackを下ろした頃には、沈みかけの太陽が、西空に広がる巻積雲を茜色に染めていた。 Tod「壮観だね」 Mia「これこれ。これを見に来たんだよね」 設営は後回しにして各々折り畳み椅子だけbagから出し、慣れた手付きで素早く組み立てた。 横並びに座って日没の絶景を堪能することにした。 Tod「太陽に雲がかかってないしgreen flashを見られるかもしれないね」 Mia「だね。期待」 green flashは、太陽が沈む間際に輪郭上部が一瞬だけ緑色に輝いて見える珍しい自然現象だ。 大気と地表の温度、光の屈折など複雑な条件が揃わないと見られない。 三人はその現象を知っていて、かつて何度もこの場所で見ようと身構えて日没を待ったことがあるのだが、その目的を達成できたことはなかった。 三人のいるBeacon Hillから西の地平線までは、緩やかな丘陵地帯”Hill Country”が続いている。 太陽はゆっくりと空際線に近付いて行ってるように見えたが、下端が堺に触れた途端、急に加速したように見えた。 Mia「こっから速いんだよね」 Tod「もう少し夕陽を見せてくれると見せかけて、急に駆け足で逃げちゃう」 Mia「その方がこっちが名残惜しさを感じるからかな」 Tod「太陽は策略家だなあ」 言ってる間に太陽はみるみる沈んで行く。 いよいよ太陽全体がこの世の向こう側に行ってしまおうという瞬間、ほんの一瞬だけemeraldの閃光が瞬いた。 green flashだ。 Molly/Mia/Tod「わっ」「ぐっ」「おぉ」 三人から言葉にならない声が漏れた。 さっきまで太陽がいた空には、漆黒の稜線とその上に太陽の痕跡のようなぼんやりしたgradationだけが残った。 沈黙。 Mia「すごいの見たね」 Molly「今日のluckはこれだったのか」 Tod「今朝も言ってたね、それ」 Mollyが何か言おうとしたが、Miaが背筋を伸ばしながら言った。 Mia「真っ暗になる前に設営しちゃおう」 MollyとTodは頷いて荷物を下ろした場所に戻り、backpackから一通りのcamp道具を出した。 協力して手際よく設営作業を行った。 まず、tarpを張った。 この季節に雨の心配はなさそうだったが、張るだけで秘密基地感が出て良かった。 その下に三人分のsleeping padを拡げ、さらにその上にsleeping bagをほっぽり出して載せておいた。 こうしておけばsleeping bagは勝手に空気を吸って膨らんでくれる。 日光に当てられればなお良かったのだが。 tarpのpoleの間に、hanging tapeを張って、時代が乗ったColemanのlanternをひとまず火を点けず吊るした。 寝床ができたら次は食事の準備だった。 手分けして薪にする枯れ枝を拾い集めた。 着火から炎の調整の為に、長短太細様々な薪を拾った。 着火時や炎が弱まった時は燃えやすい細い枝を、火が安定している時は太い枝を焚べる。 以前石を積んで作った風防が概ねそのままの状態で残っていたので少しだけ直して再利用した。 湿気を含んだ木の皮はナイフを使って剥いだ。 水分多いと炎の温度が上がらず煙ばかり出てしまうからだ。 準備ができたらいよいよ着火だ。 丘を登りながら拾った松の球果を着火剤として利用した。 鱗片が開いた球果は空気が入りやすく油脂も含んでいて燃えやすい。 枯葉と混ぜてで小さな山を作り、麻紐を解いて火口にした。 火おこしはMiaがやった。 慣れた手つきでknifeの背を使いferrocerium rodを擦ると火花が弾け、一発で麻紐に小さな炎が宿った。 Miaはこの小さな炎を大きく育てる術を知っていた。 麻紐に灯った微かな炎を松の球果に移しはっきりと炎の姿を確認すると、そこに小さな枯れ枝、続いて少し大きな枯れ枝を加えることで、炎に勢いが付いてきた。 火ばさみは持って来てないので、丈夫そうな枝で代用した。 炎が安定してきたところで、Miaは火の着いた小枝で先ほど吊るしたlanternを点灯し、そして二人に缶beerを配った。 焚き火でMiaの父親が用意してくれていたbauruを焼いた。 今夜の”タネ”はcroque-monsieurだった。 hamとcheeseだけでなく、creamyなwhite sauceも表面ではなく生地の中に閉じ込められていた。 焦げないようにゆっくりと温めて食べた。 3人は久しぶりに雑多な日常を忘れて気の置けない仲間との夜さりを楽しんだ。 Tod「Mollyの家族はどうしてtoasted sandwichのことをbauruって言うの?」 Molly「え?Todの家は違うの?」 Mia「あたしの家はtoastieって呼んでるよ」 Molly 「えー、だってbauru焼く道具にbauruって書いてあるよ、ほら」 Tod「あ、ほんとだ。maker名とかbrand名じゃないの、それ」 Mia 「あり得る」 Molly「まあ、ウチではずっとbauruはbauruなんだよ。だから今日は二人が食べてるのはtoasted sandwichでもtoastieでもなく、bauruだよ」 Mia 「美味しいからなんでもいいや」 Miaは一旦立ち上がり、乾煎りした胡桃をskilletごと持って戻ってきた。 一粒手に取ると、視線の高さまで持ち上げて、虫食いの跡がないかよく観察した。 Mia「fresh from nature」 胡桃を平な地面に置くと、peg hammerを手に取り振り上げた。 Mia「Xiǎo!」「Lóng!」「Bāo!」 Mianのtimingで振り下ろすと、胡桃が見事に割れた。 Tod「何だい?その掛け声」 Mia「我がfamilyに伝わる百発百中のおまじない」 Molly「あたしもやってみたい」 Miaと場所を換わって同じように胡桃を割ってみる。 Molly「Xiǎo!」「Lóng!」「Bāo!」 今度も見事に割れた。 大笑いする三人。 Molly「なんかよくわからないけど、面白い」 三人はその後もたわいのない会話や冗談を言って談笑し、歌を歌っては笑い転げた。 いつの間にか夕焼けを彩った巻積雲は去り、満天の星が瞬いていた。 直火で温めたsangríaを飲んでいる内に、Miaは眠ってしまった。 MollyとTodも段々と眠くなり、自然に仰向けになって星空を眺めた。 まったりとした間が流れる。 するとMollyが口を開いた。 Molly「こんなにたくさん星があるのに、人が住める星はこの中に一つもないんだね」 Tod「うん。全部、恒星だもんね」 Molly「けど星と星の間の暗いところに惑星が隠れてると思えば、それもまた浪漫なのかな」 Tod「惑星は浪漫だ、もんね」 二人はAhlberg教授のclassの課題のことを思い出さずにはいられなかった。 Tod「SETIのredoは失敗と認めざるを得ないね。次の一手を考えないと」 Molly「そうだね。早く考えないとだね」 Tod「まだ発表まで2週間あるし、焦ることはないよ。明日からまたがんばろう」 Molly「ありがとう。Todは研究室に入るの決まってるのに。助かる」 Tod「気にしないで。協力できることはするから」 Molly「Plan Bは絶対わたしが考えるよ」 Tod「何かideaがあるの?」 Molly「ううん、まだない。Nada、nichts、meiyou」 苦笑いするTod。 そして沈黙。 Molly「あーあ。今日はいい一日になるはずだったのに」 Tod「それ、朝のbusでも言ってたよね。どういうこと?」 Molly「今朝ね、目覚まし時計より早く目が覚めたんだ。競争に勝ったの。たまにあるんだけど、これはluckyな一日になる前兆なんだ」 Tod「なるほど、そういうことか」 Molly「体内時計が機械に勝る、ってすごくない?」 Tod「うーん」 Todは腑に落ちない様子だった。 Molly「前からたまにあったんだけど最近特に勝利の頻度が上がってる気がする。これは良い兆候だよ。きっとわたし達大発見に近付いてるんだな」 Tod「盛り上がっているところ悪いんだけど、君は大きな勘違いをしてるよ」 Molly「ん?どうして?」 Tod「無粋なことを言うようだけど、君の早起きは、cortisolのせいだと思う」 Molly「cortisol?」 Tod「そう。stress hormoneのcortisol」 Molly「わたしstressなんて感じてないよ。毎日楽しいし」 Tod「それが君の君らしいところなんだよ。stressというのは、本人が気が付かない内に心に忍び込んで来るんだよ。忍者のように」 Molly「自覚はないけどstressが溜まってるってこと?」 Tod「まぁそうだろうね。けど心配しないで。一時的にcortisolの分泌が増えることは誰にでもよくある事だよ」 Molly「そうなの?」 Tod「cortisolはstressを感じると分泌されて体の緊張状態を作るhormoneだよ。睡眠中は体がrelaxするように分泌が抑制されて、起床時間に近づくにつれ分泌量が増える。目が覚めた直後の刺激に体が対応できるよう起床前から体内で準備を促すんだ。ちなみにcortisolは起床の二時間前から体内で増加するらしいよ。”起きなきゃ”って気持ちが強いとより多く分泌されて目が覚めやすくなる。遠足の日とか大事なeventがある日に寝坊しないできちんと起きられるのはcortisolの効果だ」 Molly「わたし、毎日が遠足気分なのかな」 Tod「Mollyは責任感が強いから、”自分ががんばらなきゃ”って気負い過ぎなのかもよ」 Molly「そんなつもりないけどな。いつも二人に頼ってばっかだし」 Tod「たまに目覚まし時計より早く目が覚めるくらいなら心配ないけど、慢性的なcortisolの分泌過多は不眠症とか鬱とかにも結び付きかねないし、免疫低下とか内臓機能障害とか色々悪影響もあるから気を付けないとだよ。とにかくstressを溜め込まないことだよ」 Molly「stressから身を守るhormoneが出過ぎると鬱になるって皮肉なものだね」 Tod「全くその通りだよ。身体というのは絶妙なbalanceで保たれてるってことだよね。恒星と惑星と同じだね」 Molly 「Todに言われるとなんか説得力あるな。わたしがlucky dayの兆しだと思ってたのは勘違いどころか不健康の兆しだったってことなんだね」 Tod「まあこういう思い込みは誰にでもあることだよ。unconscious biasってやつだね」 Molly「思い当たるな。わたし、千のjinxを持つ女だから」 Tod「Jinxの心理的な効果は否定しないけど、ほとんどが根拠のない認知biasだね。あるいは、錯誤相関というべきかな。関連がない事象に相関性があるという錯覚。近い考えに確証biasってのもあるけど、自分の正当性を証明する為に都合の良い情報やdataにばかり注目してしまうbiasだよ。例えば、”今日はlucky day”と思い込んだ君がcasinoに行ったりしたら危険だろうね。偏見と思い込みで無謀な賭けをしかねない。そういう時こそ大損するんだよ、人間は」 Molly「確かに」 Tod「まあ、いままで正しいと思ってたことを疑ったり否定するのは誰でも難しいよ。けど、よく言われるように、meta化って大事だと思うよ。特に学者や研究者を目指す僕らのような学習者には」 Molly「”meta化”、”meta認知”、”meta思考”。ほんとよく言われるけど、実践するとなると難しいよ。言うは易し行うは難しだわ」 Tod「要は思い込みや偏見に囚われずに考えろってことだよ。今の僕らに必要なことかもね。灯台下暗しってことだってあるかもしれない」 Molly「灯台下暗し、か」 それからMollyは膝を抱えて座った姿勢で火床をじっと見つめ、動かなくなった。 焚き火は既に熾火となり、炎も煙も出さず、薪木の芯が静かに呼吸するように真っ赤に輝いていた。 夜風が草木を撫でる音。 生き物の息遣いが聞こえそうな静けさ。 その時、Mollyの脳裏にgreen flashさながらの閃光が走った。 Mollyが唐突に声を上げた。 Molly「見つけた!Plan Bを見つけたよ! 」 Tod「すごいな、Molly!閃いちゃったんだ。flashだ。まさに、green flashだ!」 Todが掌を上げてhigh fiveを求め、Mollyがそれに応えた。 その騒ぎでMiaが寝ぼけ眼で起き上がった。 Mia「見つかった?宇宙人見つかったの??」 熾火が夜風に吹かれ、小さな炎が立ち上がった。 星彩。

Study Room-Plan Bravo

午前中のUniの学習室は学生数もまばらだった。 昨晩の野営campから直接登校したMolly、Mia、Todの三人は昨晩と同じ服装のまま丸tableで作戦会議を始めようとしていた。 Mia「さあさあ、昨日思いついたっていうPlan Bを早く教えてよ、Molly」 Mollyが真剣な表情で前のめりに顔を突き出すと、MiaとTodの二人も興味深そうに顔を近づけた。 Mollyは、もったいぶらずに簡潔な一言で答えた。 Molly「野良dataをsalvageしよう」 MiaとTodはピンと来ていない。 Mia「野良data?」 Tod「salvage?」 三人は顔を近づけたまま互いの顔を見合った。 二人がMollyの方を向いて同時に訊いた。 Mia/Tod「野良dataとは?」「salvageとは?」 Molly「世の中にはDIYした電波望遠鏡で天体観測しているアマチュアの天文学者がたくさんいるでしょ。その人達が受信した電波を集めて分析しよう」 Mia「amateur天文学者の非公式観測dataのことを野良dataって言ったのね。そういう人達って自分で分析もしてるんじゃないの?そもそも分析済みのdata、残してるかな」 Molly「保存方法は人それぞれだと思うから、やってみないとわからない。けど、SETI@homeと同じように、集めた後の分析が重要だから、Todが作った最新の解析programでやり直す意義があると思うんだ」 Todは、黙ったまま軽く頷いた。 Mia「そもそもDIY電波望遠鏡って精度とか性能的にはどうなのかな?やっぱり国とか大学の天文台みたいな公的機関の設備の方が遠くまで観測できるしETI信号が見つかる可能性が高いってことない?」 Molly「常識的にはYes」 Miaが不安そうな表情を見せた。 Molly「わたし思ったんだけど、ETが遠くにいると決まった訳じゃないんじゃない?」 Mia 「だって近くにいたら地球に挨拶くらいしに来てるはずじゃん?遠くにいるって考える方が自然じゃない?」 Molly「父に聞いたんだけど、DIY望遠鏡でも結構遠くまで観測できるんだって。ちょっと挨拶に、って気軽に来られる距離よりずっと遠くだよ。父も若い頃友達と作ったことがあって 、わたしの家にDIY望遠鏡がまだあるんだ。父が言うには、系外銀河とまではいかないけど、spiral armくらいなら観測できるって」 Mia 「spiral armってなに?」 Tod 「渦巻銀河の腕みたいにはみ出てるとこのことだよ。太陽系が含まれるOrion Armの幅だけでも500光年はあったはず。一番近い恒星はCentaur座でその距離は4.3光年しかないから、Orion Armだけでも無数の未発見惑星があるはずだ」 Molly「そこでmeta思考だよ。宇宙人がいるとしたらそれは地球から遠く離れた場所に違いない、という常識を忘れてわたし達は近場を探すのよ」 Tod「SETI@hand(at hand=手近)ってこと?」 Molly 「それいいね」 Mia「なるほど、わかった」 Molly「世の中にDIY望遠鏡の受信dataがどれくらい残ってるかはわからないけど、challengeしたいと思って」 Mia「OK. のったわ」 Molly「どれくらい受信dataを集められるかが鍵になると思う」 Tod「賛成。ゆくゆくはdataの量と質の両方が大事になるけど、まずは量が必要なことは間違いない。どんなdataが集まりそうなのか、ある程度集めてみないと皆目見当つかないからね。あと難しそうなのはdataのformatがまちまちになりそうなことかな。受信dataに付随するmeta dataの方が肝になるかも知れない。観測条件とか、いろんな情報を含んでるはずだから。ある程度予測はできるので色々なpatternを想定して分析programをupdateしておくよ」 Molly「ありがとう。わたしはblogとかsocial mediaでDIY天体観測してそうな人を探してdataを提供してもらえないかcontactしてみるよ」 Mia「わたしはChaChaでCaramelに呼びかけしてみるよ。DIY電波望遠鏡で観察したdataを持っている人はそのdataを共有してくださーいって。うまくいけば世界中から集まるかも知れない」 Miaは自分のfollowerをCaramelと呼んでいた。 Molly「Miaのfollowerがきっと協力してくれるね。助かるよ。ありがとう」 Tod「すぐ始める?」 Molly「午後の講義出たら一旦帰宅してshower浴びようよ。それで今日は各自remoteで着手しようか」 Mia「Roger that.」 Todが3人の真ん中に拳を突き出すと、残りの2人がその拳を自分の拳で軽く叩いて散会した。 ・・・と、MollyとMiaは思ったのだが、2、3歩進んだところで振り返ると、Todは拳を突き出した姿勢のまま固まってしまっていた。 Molly「どうしたの、Tod?」 Tod「・・・」 聞き取れないくらいの小声で何かを呟きながら、考え込んでしまているようだった。 Mia「どうした少年?悩み事ならお姉さんがいつでも胸を貸すぞ」 MiaはTodの正面に立ち、Todの頭を優しく両手で掴むと、母が子にするように自分の胸に抱き込んだ。 Todは動じることなく、Miaの胸に顔を埋めたまま独り言を続けた。 Miaの胸に埋もれたTodの言葉は籠もっていてよく聞き取れなかった。 Mia「何言ってるかよくわからないな」 Todの頭を持ち上げて胸から解放した。 Tod「ぷはーっ。一つだけ懸念点が・・・。いや、けどまずは量だ。摂動のことは後から考えよう」

Zapping

その日の夜からTeam Bの野良data集めが始まった。 分業を始める前にInternet上で既に公開されている野良dataがどの程度あるか、三人はonline meetingを行いながら探してみた。 検索wordを換えながら多方面からapproachした結果、映画一作を観るくらいの時間で何件か見つけることができたのだが、想像していた通りそのまま分析処理を行うにはいくつか問題があることが判明した。 第一に、dataのformatに統一性がないことが一番の問題だった。 第二に、観測条件が不明確なdataがあった。 第一の問題は、機械的に対応が可能だった。 Todの分析programを機能拡張し、通常の処理を行う前に中間処理を行うcompilerを作ることにした。 第二の問題は、人の手で補うしかなかった。 通常は、観測地、観測時間、観測対象などの情報はformatは違えど受信dataのmeta dataに含まれるが、それがない場合があった。 目的は宇宙のどこかから発せられている(であろう)人工的な電波を捉えることであり、現段階では「どこからの電波」かは二の次と考えることもできた。 つまり、「あるかないか」の議論の前に「どこから来たのか」を憂慮するのは皮算用のようにも思えたのだ。 しかし、電波の発信元を明確にしない限り、ISSが発する各種の電波や、最悪の場合、近所の家電の電波を拾っていただけ、ということすら考えられる。 そして、Todの分析programの高度処理の有効性を最大限に活かすのは、観測条件を考慮することが必須であった。 受信dataだけでなく観測条件の情報も多いほど、分析結果の信憑性が高くなるからだ。 観察者に直接訊くことが一番手っ取り早いのでMollyとMiaが担当することになった。 Todは分析programのupdateを進めた。 Miaはその知名度を活かし、世界中のCaramel(彼女のfollower達)に協力を求める動画を作成し公開した。 amateur天文学者が自作電波望遠鏡で収集したdataをMiaが探しているという情報は、瞬く間に世界を駆け巡った。 Miaのfollower自身がそういったdataを持っているというcaseは多くはなかったが、知り合いに尋ねたり、心当たりのある方面で探してくれることを申し出てくれるfollowerが大勢いた。 何よりも、Miaの発信を拡散してくれるだけでもありがたかった。 Mollyの役割は地道な努力が必要だった。 あらゆるBlogやsocial mediaを巡回してamateur天文学者を見つけ、一人ひとりにmessageを送って接触し、事情を説明してdataの提供をお願いして廻った。 最近受信したdataであれば保存されている可能性も高く、dataの粒度も高そうだが、古いdataは古いdataで分析をredoする意義があるので、新旧問わずとにかく収集を試みた。 接触を試みた相手の中には返信をくれない人や、既に亡くなっている人も何人もいたが、接触できた人でdata提供を拒む人は誰もいなかった。 Miaの発信を知っていて、Mollyが彼女の仲間であることを知ると、安心してdataを共有してくれるだけでなく、声援をくれる人が多かった。 MollyとMiaははじめの数日はとにかく「量」を稼ぐため多方面からdataを集めることに徹し、並行してTodが分析programをtest runningしながら運用を行なった。 徐々にdataが集まってきてからは、MollyとMiaもdataの分類をmanualで行える範囲で協力して行なった。 昼は学校で進捗の確認や次のstepを話し合い、夜は自宅から各自作業を行う毎日が過ぎた。 SETI@homeのredoを行なっていた時に比べると、はるかに忙しい日々が続いた。

Bedroom-Online Meeting

発表まであと7日。 Team Bは帰宅後もonline meetingを行なっていた。 几帳面なMollyとTodはそれぞれ自室のdeskに向かって参加していた。 Miaは自宅のbedの上であぐらをかいて参加していた。 Miaが韓国の鮒焼き、Bungeoppangを齧りながら言った。 Mia「すごい数集まったね」 Molly「Miaのおかげだよ。いろんなところで告知してくれてありがとう」 画面越しにthumb upするMia。 Tod「量は十分だね。このpaceだとMagmaを使っても発表当日までに全dataの分析は無理だな。dataの整形に時間がかかるから。発見の確率が高そうなdataから優先して分析するよう取捨選択が必要になるよ。観察条件が不明確なdataは除外するか後回しにしよう」 Molly「実際、いろんなdataがあるね。Brazilの5歳の女の子が観測したdataとかあったし、もう観察者が亡くなってるdataもかなりあったよ」 Tod「そうだ。変なfileが紛れ込むことがあるから、気をつけて。僕に届いた匿名のDMに添付されてたこのdata、見てよ。あからさまな悪戯だ」 そう言うと、Todは画面共有して一つのfileを見せた。 ForBikiniCarWashers.fits とある。 fitsは、天文分野で用いられる一般的な観測dataのfile formatである。 Tod「file nameからして提供者が想像できるけど、解析したらこれになった」 Todは、画面を切り替えた。 星雲のような星の集合体が見えた。 Todが操作し、集合体の全体像が見えるようする。 すると集合体の外観は、bikini姿のMiaだとわかる。 Mia「はー?何これ?」 立ち上がるMia. Mia「あたしのお尻、こんな貧弱じゃないし!もっとプリケツだし!」 Tod「怒るとこ、そこじゃないでしょ」 Molly「本物の観測dataではないってことだね」 Tod「ご丁寧にfits形式で保存して観測dataを装ってるけど、人為的に生成されたfake dataだよ。3D dataから帰納的にfitsを創成したんだろうね」 Mia「偽dataを紛れ込ませてあたしらを撹乱するつもり??ったく暇な奴らだ!」 Tod「本当に悪意があれば、もっと巧妙に本物と間違えるようなdataを紛れ込ませると思う。敵対的摂動というやり方だ。摂動とは、端的に言うと、わずかなズレや、ズレを生じさせる力のことだ。例えば、実際の観測dataにほんの少し誤った情報、つまり摂動を加えた敵対的sampleをMagmaに学習させることで、Magmaの思考logicを崩壊させることができてしまう。AIの脆弱性を突いた脅威になり得るんだよ」 Molly「そっか。わたしが初めてPlan Bの話をした時に、Todが言ってた懸念点って、悪意を持った人によって野良dataに敵対的摂動が紛れ込むかも、ってことだったんだね」 Tod「その通り。そこがPlan Bの弱点と言える。SETI@handは性善説で成り立っていると言えるかもしれない。その意味じゃSETI@homeと同じだ」 Mia「この”敵対的な”偽dataを作った’敵対的な”teamの奴らに、”敵対的な’お仕置きを食らわせてやるわ」 Molly「まあまあ。このfileはすぐに悪戯ってわかるように作ってあるじゃん。意図的にそう作っているところを見ると、本当に”敵対的”ってことではないんだよきっと」 Mia「彼奴等、からかってやがんな」 Tod「本物の脅威になるような敵対的摂動が紛れ込まないよう、引き続き警戒はしておこう。観測dataの収集量が増えれば、おかしなdataが含まれても不思議じゃないから」 MollyとMiaは画面の前で頷いた。 Tod 「よし。Magmaを止めないように、昼間はdataの取捨選択してqueueに投げ込んで、SETI@homeの時みたいに夜中に処理させるようにしよう」 MollyとMiaが同意を示した。 Miaが思い出したように切り出す。 Mia「そうだ。CaramelからもらったdataをCumulonに集めてるんだけど、その中に面白そうなdata見つけたよ。見てくれる?」 Molly「へー、もちろん。見せて見せて」 Cumulonはuniのcloud server「Cumulonimbus(=入道雲)」の略で、学生達だけでなく教職員や職員も使っている愛称だった。 Tod「Miaの呼びかけでdataを送ってくれるamateur天文学者がみんなMiaのfanって訳じゃないと思うけどな・・・」 MiaはTodに応戦するようにcameraに向かってデコピンした。 Miaが自分のlaptopを画面共有し、folderが映し出された。 Mia「匿名でfolderごと投稿してくれた人がいて、30年くらい前の観測dataみたい。けっこうまとまった量あるよ」 Miaがfolder内をscrollさせて見せると、数百から数千のfileが保存されていることが見えた。 Mia「どうかな?使えるのかな、これ」 画面を見るMollyが明るい反応を見せてくれないのでMiaは心配になった。 案の定、Mollyがしんみりと答えた。 Molly「う~ん。せっかく見つけてくれたdataだけど、Mia。これは使えない気がする」 Mia「そっか。これだけでわかるの?」 Molly「うん。ほら、file nameに”DPEris”って入ってるでしょ?これ、meta dataを調べるまでもなく、観測対象の”Dwarf Planet Eris”を示してると思うんだ。Erisは太陽系を公転する準惑星だからETIが住んでる可能性はほぼ無いよ。生命維持が可能な”habitable zone”から外れてるし表面は凍ったメタンで覆われてるから。Erisはそういう特徴とか星そのものの大きさが冥王星に似てるから「冥王星の双子(Pluto's Twin)」って呼ばれてるよ」 Mia「なるほど。冥王星も準惑星だよね?」 Molly「そう。2006年までは惑星だったけど」 Mia「海王星、天王星、冥王星っていつもごっちゃになっちゃう」 Molly「冥王星は圧倒的に小さい星だよ。それが惑星から準惑星に格下げされた理由でもあるし。冥王星もErisも月よりも小さいからね。あと、Neptuneは海の神、Uranusは天の神、Plutoは冥界の神だから、一番不吉なのが冥王星だよ」 Mia「うわっ。ほんと不吉。忘れよう、冥界の神の双子はなし、なし」 Tod「ははは。まあdataは他にもたくさんあるから、さっきも話した通り、まずは可能性が高そうなdataから分析するってことにしよう。今晩もMagmaは稼働してるので、明日また昼間は手作業のmeta dataの補完と夜中に分析させるdataをqueueに投げ入れる作業やろう」 一同同意して散会した。 発表まであと1週間となったが、この日はまだ三人に焦りはなかった。

Cafeteria-TV and Bikini

発表まであと2日。 Cafeteriaで流れるTV番組がMiaのことを報道している。 Newsreader「俳優でKOLのCarameliser 6ことMia Marleyさんが学友と共にSETIを再開すると発表してから3週間が経ちました。現在のところETが見つかったという発表はされていませんが、刻々と彼らの探索結果発表日は迫っています。果たして彼らの前代未聞の挑戦は成功するのでしょうか」 前回のpresentationの壇上でMiaが両手の指を三本づつ立てるCarameliser 6のpostureで戯ける映像を皮切りに、三人を紹介する映像が流れた。 MollyとTodは数年前のYear Bookのportraitを使って紹介された。 二人の紹介は静止画一枚づつだったこともあり、Miaの動画による華やかな紹介に比べるとかなり見劣りした。 Todは歯の矯正をしていた時期に撮影された写真で、笑顔の前歯に銀色の器具が取り付けられているのがはっきりと見えた。 嘆息して項垂れるTod。 小さな声で嘆いた。 Tod「せめて他の写真を使って欲しかったよ」 MiaがTodを慰めるように肩に手を置いた。 Mia「Todはいまもhandsome gentlemanに成長中だから大丈夫だよ」 Gizmoを取り出しTodを撮影しようとする。 Mia「近況をupdateしよう」 抵抗するTodとMiaが戯れてると、TV monitorではHarveyの発言が再生された。 Harvey「本当に感心しました。彼らには秘密の作戦があるようです。自信満々でしたよ。もしETIが見つからなかったら、3人でbikini car washを1週間やるって言ってたくらいですから。勇気ある発言にyellを送りたいと思います。頑張れ、Team B」 TodがMiaの腕を静止して立ち上がった。 Tod「そうだ。僕ら勝手に罰ゲームを決められてるだよ。マズい、これはマズいぞ」 Mia「bikini car wash、面白そうじゃん。ET見つかってもやろうよ」 Tod「僕は無理だよ。そもそもbikiniなんか持ってないよ」 Mia「わたしの貸してあげるよ。ほら、これどう?」 Miaがshirtの裾を持ち上げてbikiniを見せ付けた。 Bikiniには左右の胸に漢字で一文字ずつ「無」「双」 と書かれていた。 Todは慌てる様子もなく、戯けるMiaを前にしても冷静な表情を保った。 Tod「いつも思うんだけど、Miaはこの漢字の意味わかってるの?」 Molly「Miaはいつも前向きだね」 Mia「毎日筋トレしてるからさ。筋トレでdopamineが分泌されるとpositive思考になるんでしょ?」 立ち上がってshirtを脱ぎ、body builderのようなpostureを交えた謎の踊りを見せる。 TVでは専門家らしき人物がSETIの解説をしている。 Todが動じることなく、真剣な表情でMollyの目を直視した。 Tod「それらしいdataはいくつか見つかったけど、確証できる信号は見付かってない。今できることは、これまで通り集まったdataを一つひとつ分析し続けることだ。幸いdataはMagmaでも分析し切れないくらい集まったんだし、これからは更に厳選して分析を行った方がいいと思う」 Molly「宝くじみたいだね。当たりくじが入ってると信じて引き続けよう」 Tod「厳選の方法はMollyに任せるよ。僕なら、meta dataを見てhabitable zoneを中心に条件が満たされているものにpriorityを置くけど、ここまで来ると運的要素もあるから、Mollyの直感で選んで」 Molly「責任感じちゃうな。けど、やってみるよ」 Tod「野良dataに着目したのは絶対にいいideaだよ。これだけのdataが集まったんだから、きっと当たりくじはあるよ」 まだ踊っているMia。 Tod「Mia、もうおっぱい仕舞ってよ」 Mia「えー、ETの発見祈願の踊りだよ」 Tod「いいよ、もう」 不満そうに先程脱いだshirtを着るMia。 Tod「正直言って、今回の課題でいい結果を出してUS(Uniship Score)で逆転できないとMollyのintern推薦を獲得するのは難しいだろう」 Molly「二人とも、わたしの為にいつもありがとう」 Miaは照れ隠しなのかわざと大袈裟な笑顔を作り、黙ってMollyの両手を握った。 Todも黙って頷いた。 三人の背後から口笛が響いた。 振り返ると、少し離れたところにTeam Aの三人が立っていた。 Harveyがこれ見よがしにbikiniをチラつかせた。 わざわざ揶揄いに来たようだ。 Miaが素早く立ち上がってshirtの前を全開に開いて見せた。 Mia「bikiniがどうしたって?」 cafeteria中に歓声が上がった。 Shirtを開いたまま仁王立ちのMia。 顔を覆って呆れるTod。 男性News Reader「彼らは果たしてETを見つけることはできるのでしょうか」 女性Newsreader「夢がありますね」 男性News Reader「今日はここまでです。良い一日を」

Bedroom-Wakeup2

朝。Mollyの寝室。 目覚まし時計のAlarmが鳴り響いていた。 目を開けるMolly。 以前のようなAlarmより早く起きる競争は止めたようだ。 腕を伸ばし、Alarmを止めるMolly。 「負けるが勝ちよ」 独りごちてbedから出た。 相変わらず出かける服装で寝ていた模様。

Parlour-Last Chance

Snowball家のparlour。 父がkitchenでMollyの朝食のbauruを作り、母はsofaで韓流dramaを観ていた。 いつもの光景。 父の服装から、今日もこの後釣りに行くことが見て取れた。 Mollyはいつものように2階で洗顔して歯を磨き、水道水で簡単に髪を整えると階段を降りてparlourに入って行った。 Sophie「おはよう、Molly。明日が発表だったよね?大丈夫?見つかりそう?」 母が視聴中の韓流dramaを一時停止して質問してきた。 dramaの台詞はひとつでも聴き逃したくないのだろう。 彼女は真剣なのだ。 気にかけてくれていることが、Mollyには嬉しかった。 Molly「うん。まだ見つかってないけど、やれることはやってきたし、まだやるつもり。今日が最後のchanceだから、学校に泊まるかも。着替え持ってくわ」 Sophie「Do your best, and let God do the rest.ね。なんだかわたしもドキドキしてきたわ。」 counter越しに父も口を挟んで来た。 Roald「明日の発表の評価次第でNASAのinternの推薦をもらえるか決まるんだね?」 Molly「そう。今年は希望者が多いし接戦なんだ」 Sophie「Mollyが一番がんばってるんだから、神様はきっと見逃さないよ」 Molly「うーん。神様はわたしが最近教会行ってないの知ってるんじゃないかなぁ」 Sophie「一応、Mamaのbikiniも探しといたよ」 そう言うとsofaの前のcafe tableから、自分の物と思わしきbikiniをいくつか取り上げてMollyに見せた。 Molly 「それ、一番避けたいやつだよ」 Sophie「冗談よ。Mamaが代わりにやってもいいし。bikini car wash、楽しいわよ」 Roald「Molly、NASAじゃなくても天文の研究は続けられるし、民間の宇宙business企業だって最近はたくさんあるよ」 Mollyは、父が自分がinternになれなかった場合を心配して言ってくれていることがわかった。 Molly「ありがとう。けど、NASAに入るのは小さい頃からの夢だから、最後までがんばるよ」 Roaldは、Mollyの瞳をじっと見つめて黙って頷き、lunch bagを手渡してくれた。 Sophie「よし!Mollyが宇宙人探しで一晩中がんばるなら、わたしもこのdramaのseason 7イッキ見、朝までがんばっちゃおうかな」 Roald「よし!僕も今日は夜釣りで爆釣するつもりで朝までがんばっちゃうぞ」 無駄にはしゃぎ出す両親。 Molly「そういうことじゃないと思うよ」

Study Room-the day

24時間後。 Focus roomでmouseを握ったまま眠っているMolly。 Focus roomの外のdiscussion tableにも、同じく寝落ちしているTodとMiaの姿が。 明らかにETIからの信号は見つかっていないようだが、Magmaの分析programだけは動き続けていた。 monitorに結果のrowだけが増え続けている。 Mollyは、夢の中(うち)で、この数日の出来事を思い出していた。 Parlourでの父との会話。 Roald「これは僕が若い時に友達と作った電波望遠鏡だよ」 Beacon Hillで野営した時のTodの言葉。 Tod「要は思い込みや偏見に囚われずに考えろってことだよ。今の僕らに必要なことかもね。灯台下暗しってことだってあるかもしれない」 Online MeetingでのMiaの発言。 Mia「どうかな?使えるのかな、これ」 Miaがfolder内をscrollさせてると、数百から数千のfileが保存されていることが見えた。 ・ ・ ・ ガバッ。 Mollyが勢いよく目覚めた。 doorを開けてFocus cellから出てきた。 その音で、Miaも起きるが、キョトンとした寝惚けた様子。 Molly「Mia、あれどこだっけ?」 Mia「あれ?あれって・・・Thong(Tバック)のこと?」

Auditorium-the time

所変わって小講堂。 聴講生、実習生が次々と入室して来て、発表会が始まろうとしていた。 前回の発表の時より人が増えていた。 MiaとTodは既に着席していた。 いつもは冷静沈着なTodも、今日は落ち着かない面持ちで焦りを隠せなかった。 Tod「もう始まっちゃうよ」 まだ眠たそうなMiaが答えた。 Mia「Mollyを信じて待つしかないよ。ギリギリまで粘ろう」 二人の眼下にTeam Aの三人が見えた。 自分達の発表に向け、着席せずに立ったまま綿密な事前打ち合わせを行なっていた。 Tod「彼ら、惑星見つけたみたいだよ」 Mia「Wow. すごいじゃない」 Tod「今時見つけるだけならそんなに難しいことじゃないよ」 Mia「そっか。あたし達のET探しの方がずっと難易度高いもんね」 Tod「そうだよ。MollyのNASAへの推薦を勝ち取るにはclutch playが必要だからね」 Mia「Oh, yeah! We’re gamblers!!」 戯けてみたが、Todは笑ってくれなかった。 Miaは少し畏まった。 Mia「疑う訳じゃないけど、どうなの?見つかると思う?」 Tod「こればかりはわからないな。宝くじみたいなものだよ。時間さえ許せば僕が作ったprogramはいつか当たりを見つけることができるけど、そもそも当たりくじが入ってなければ、絶対に当てることはできないから」 Mia「Oh, no! We’re stumblers(つまづきそうな人)!!」

Focus Cell-Clutch Play1

Focus Cellでは、Mollyが独り作業を続けていた。 Molly「ここにあるはず」 uniのCumulonにarchiveされたfileを検索していた。 検索条件に、“DPEris”の一語を入力して実行する。 “RnR” というfolderに数百のfileが保存されていることがわかった。 Molly「Bingo」 Mollyは安堵の表情を見せ、作業を続けた。 一旦Cumulonを離れ解析programのrepositoryを開いた。 “IMPORT”を押下し、Cumulonの“RnR”folder へのpathをpasteし実行した。 すぐにimportの完了を示すmodal windowがpop upされた。 Mollyはmodal windowを消去し、大きく息を吸い込み気合を入れる。 これが最後のchanceかも知れない。 Molly「Xiǎo!」「Lóng!」「Bāo!」 掛け声と共にkeyboardのreturns keyを叩いた。

Auditorium-Tod`s Explanation1

小講堂ではTeam Aの発表が終わるところだった。 彼らは探索の結果、系外惑星である確率が高い星を3つ、候補を6つ、合計9つ見つけたことを報告した。 Mia「彼奴等、中々優秀な結果だな」 Tod「いやいや、当然だよ。前の授業で教授も言ってたけど、最初の系外惑星の発見が1995年だよ。現代ならやり方さえ間違えなければ誰がやっても何かしら見つかるはずだよ。けど、まあ9は多いね、認めるよ。運がいいよ、彼ら」 Miaが振り向くと評価委員も笑顔で談笑している。 Team Aが高得点を獲得したことがわかった。 Mia「Molly、頼むよー」 そして、祈るような仕草で中国語をつぶやいた。 「过了这个村,没这个店(guòle zhèige cūn, méi zhèige diàn)」 英語にすると、Past this village, you will never find this shop.という意味の諺だった。 last chanceということだ。 今日の発表に司会者のような役割の人間はおらず、誰もTodとMiaの登壇を促す者はいなかったが、いよいよTeam Bの番であることは火を見るより明らかだった。 誰もいないstageが、Miaには子役時代に出演した演劇の空舞台のように見えた。 TodとMiaはゆっくりと席を立ち、すり鉢型聴講席の階段を降りた。 少しでも時間を稼ぎたい気持ちが、足取りの重さに現れていた。 Todの曇った表情が、愛想を振りまくMiaの表情の明るさを際立たせていた。 登壇後も一言も発しない二人に教授がようやく気が付き、声をかけた。 Ryan「おや、一人少ないようだね」 Tod「Mollyは少し遅れて来ます。発表は僕が進めますのでご安心ください 」 やむを得ず、Todは自分のgizmoを操作し、発表を始めることにした。 Caleb「SETIは失敗したんだと思ったけど、彼ら登壇してきたね」 Harvey「悪あがきに来たんだろ。どんな言い訳するのか、見物だな」 Todが咳払いして、心のswitchを切り替えた。 落ち着いた表情を取り戻し、Todは話し出した。 Tod「では、Team Bの発表を始めます」

Focus Cell-Clutch Play2

“Magma” と刻印されたplateが貼られたsteel製のdoor。 MollyはUniの図書館内にあるFocus Cellと呼ばれる集中学習用個室にいる。 cellには窓が一つもなく、中の人間は積極的に時刻を確認しない限り昼夜すらわからなくなる閉鎖空間である。 四方の壁は吸音素材で覆われ、外部からの騒音は完全に遮断されている。 天井の照明は点いておらず、desk上の3面のmonitorが、Mollyの顔を斑色に照らしている。 Mollyは正面のmonitorから視線を外さず、手元のkeyboardをゆっくりと打っている。 両脇のsub monitorでは複数のwindowが開いていて、計測値を示す波線graphや複雑なprogramが動いているが、Mollyの意識は正面のmain monitorに集中している。 時折computerが遠慮がちにerror音を発する。 その度にMollyは両手を止めて少考する。 猫が路地を横切るくらいの時間が経つと、すぐにまた両手をゆっくりと動かす。 そして右手の小指が小気味良くreturn keyを叩くのだが、computerはまたしてもerror音を返す。 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音

Auditorium-Tod`s Explanation2

小講堂ではTodが発表をゆっくりと進めていた。 意図的に、ゆっくりと。 Tod達Team BがTeam AにUniship Scoreで勝りMollyがNASAのintern推薦を勝ち取る術は、現在Focus Cellで探索を続けているMollyがMagmaを使ってETIからの信号を発見するという偉業をあと数分の間に成し遂げることしかなかった。 あと数分間で、だ。 Todは、なんとか時間稼ぎをして発表を長引かせ、このなんでもない水曜日に、Americaの片田舎のこの学校で、Mollyが人類史に残る大発見をする可能性を少しでも高めることに使命感を感じていた。 Todの作戦はこうだった。 まず、SETIのredoに際し、過去のSETIからどのような変更を加えて行ったか説明した。 具体的には、独自開発した分析programのlogicについてなるべく時間をかけて噛み砕いた。 この領域はTodの専門ではなかったが、自らcodeを書く程度の知識は持ち合わせていたし、AIは昨今学問の至る分野で革新的な活用方法が発案されていたので、世の趨勢を鑑みれば今日の聴講者にもウケることが予想できた。 また、Ryan Ahlberg教授は学生に対し、特に演習においては結果よりも過程を重んじることで知られ、ひとたび質疑応答が始まれば、”何故その方法を採ったのか”、”何故そのように考えたのか”を質問攻めすることが珍しくなかった。 その為、Todの多少冗長な解説も、それを時間稼ぎと疑う者はいなかった。 正直に言えば、考古学者を志すTod自身は自分が畑違いのAIに関してつまびらかに語るのは時好に阿るようでもあり、これ見よがしに知性を誇示するようで疎ましく感じたが、今日に限ってはとにかく聴衆を退屈させずに発表を引延ばす必要があったので甘受するしかなかった。 ただし、語る内容の難易度については慎重に配慮した。 あまり話が難し過ぎると聴衆がついてこられなくなってしまい、Mollyが欠席していることへの横槍や、探索の成否を急かされる恐れがあるからだ。 そして、SETIのredoが早々に失敗したことは、正直に告白することにした。 むしろ、失敗に終わったことは周知の事実となっていた。 成功していればもっと早い段階で発表があっただろうし、Miaがsocialを通じて世界中のamateur天文学者に観測dataの提供を呼び掛けていたことは、Team BがPlan Bに着手したことを示唆していたからだ。 Tod「たしかに、僕らのRedo of SETIは失敗しました。当たりのないクジを引き続けても、当選しないのは当然です。”この中に当たりクジはない”ということを再確認できたことがこの試みの成果です。先人の試みは、僕たちが想像していた以上に正確無比であったと言えるでしょう。彼らに心から敬意を払いたいと思います」 Team AのHarveyがshrugし、Calebは首を横に振ったが、予想していたよりあっさりと失敗を認めたTodに気勢を殺がれてしまい、騒ぎ立てることはなかった。 それでもTodは、SETIのredoの意義について念押しすることを忘れなかった。少しでもMollyのscoreに加点させたいという気遣いからだった。 過去の観測のredoが成功した実例をもう一度説明した。2017年、分析済みとされていたKepler宇宙望遠鏡の観測dataを、GoogleとNASAがCNN(畳み込みneural network)によって再度分析した結果、人の手では見落とされていた新たな惑星が発見された事例だ。それからおよそ1年で、同じ手法を用いて6つの惑星が発見されたことを追加で説明した。 Todのこの話は、現在の技術を用いればTeam Aの惑星発見がそれほど難しいことではないことを仄めかしていた。 Team Aの三人も、その事に気が付いたが、目立った反応をすることでその事実が強調されると思い、無反応を装った。 実際、Todのこの皮肉には気付かない聴講生がほとんどのようだった。 居心地悪そうに身じろぎするTeam Aを見てTodは、我ながら少し大人気ないと思ったが、彼らの「Bikini Car Wash」発言とで帳消しだ、と割り切ることにした。 むしろ、教授も含め人々の関心は、Tod達Team BのSETIのredoの失敗後の代替案、Plan Bの方だった。 Tod「そして僕達は早急にPlan Bの立案に取り掛かりました。その方法は、ここにいるMiaがsocialで発信した通りですので、みなさんも既にご存知だと思います。世界中に数多といるDIY宇宙観測家、あるいはamateur天文学者がこれまでに収集した観測dataを再分析するという、世界初の試みです」 Tod「これら”bootlog”、少々乱暴な呼び方ですが僕達はこれらunofficial dataを便宜上このように名付けました。語源はもちろん”bootleg(海賊版)”ですが、これらが「当たりクジ」を含んでいる確度はどれくらいと考えられるでしょうか」 Todは神妙な顔で聴講席を見渡した。 具体的な応答する者はいなかったがTodは続けた。 Tod「少なくともSETIのdataと同等と考えています」 根拠はなかった。時間稼ぎが目的だった。 すると、聴講席から声が上がった。 Harvey「根拠は?非公式の観測dataにそんな信憑性があるか?」 これはTodにとって、最も予想通りの質問だった。 内心、しめたとさえ思った。 当然、回答を用意していたし、回答で時間を稼げると思ったのだ。 Tod「Mr. Orr、質問をありがとうございます。彼はとても重要なことを指摘してくれました。その通りです。解析するdataに、本物ではないdata、例えば生成AIが創造したdataや、悪意のある人間が手を加えたり捏造したdataが紛れ込んでいたらどうなるか。当然ながら、正しい結果を得られなくなってしまいます。しかし、同様の問題は、sourceが「公式」「非公式」に関わらず、新旧の天体観測data分析全てで生じていると言えます。何故なら、より大きな問題は、data sourceが何であるか、ということよりも、どうように分析するかという点にあるからです。 その大きな問題が、dataの分析過程にあるのです。最大の原因となっているのが、昨今進化が著しい次世代生成AIです。生成AIの功罪と言えるかもしれません。最新の次世代生成AIを用いれば、noiseとして抽出したdataだけで協奏曲を作曲することすら可能だからです」 Tod「実際に聴いてみましょう。sourceに使ったは、かの「有名な」SHGb02+14aです。念の為SHGb02+14aをご存じない方の為に補足すると、SHGb02+14aはかつて地球外生命からの信号として最も有力と考えられた受信電波です。2003年にSETIで検出された周波数1420MHzの弱い電波なのですが、結論として、ETIからの信号であることは否定されました。10秒くらいだけ再生しますね」 風切り音のようなnoiseが小講堂に響いた。 Tod「これを元に、僕がtuningしたGenerativeAIが”分析”した音源がこちらです」 小講堂に、Beethovenの第九と聴講生の驚嘆の声が鳴り響いた。 Tod「お気づきのように、もはや”分析”というより”創造”ですね。ただし、programを通じて一連の”処理” を行ったという点において、一般的な”分析”と何ら変わりのない実にfairなprocessしか経ていません。違うのは、処理を行う数式が極めて複雑である、という点だけです」 そういってTodはscreen全体を覆い尽くす数字の羅列を映してみせた。 Tod「これは、僕が作った 分析programの機械学習algorithmの挙動を設定するHyperparameterです。とても複雑な式で、式全体を人間が目視することはもはや一生かかっても不可能です」 言いながらTodは画面をscrollして見せたが、数式は永遠と続くかのように途切れることはなかった。 Tod「このように、次世代生成AIの使い方によっては、本来の目的とはかけ離れた結果が導き出されてしまう可能性がある、というはお分かりいただけたと思います。次世代生成AIは、このようなvolatilityを孕んでいるのです」 聴講生も腑落ちする話だったが、それだけでは”bootleg”の信憑性を担保していないことは明らかだった。 Tod「そこで、僕らはこのような次世代生成AIの特性を逆手に取る方法を思い付きました」 Todは「僕ら」と言ったが、Todが独りで開発したことは誰でもわかった。 Tod「なぜなら、悪意を持ったdata提供者が、そのようなAIの挙動を誘発するnoiseを忍び込ませて「敵対的摂動」を促す可能性があったからです。この点を僕らは最も危惧しました」 Todからは、教授をはじめ数人が頷いて理解を示している一方で、多くの聴講者がついて来てないことが見てとれた。 説明を追加した。 Tod「”敵対的摂動” は、意図的に生成された微小なnoiseが入ったdata pieceです。これが紛れ込むと厄介です。解析過程で悪戯を働き、誤った結果に導こうとするのです。”摂動”の概念は、天文学や、量子力学、数学、工学など、様々な分野で用いられます。みなさんも馴染みがあるのではないでしょうか。しかし、ここでいう”摂動”は、AI界隈、Neural Network領域で用いられる”摂動”です。根本的な意味は同じで、小さな変化やズレを表します。この”摂動”を用いることで、分野によっては安定性や感度を評価したり近似解を求める際に有益な役割を果たします。しかし、AIに対しては悪用も可能なのです」 さらに続けた。 Tod「そして、悪意のある敵対的摂動への対策としては、学習dataに敵対的sampleを加えることで頑健性を高めるadversarial training(敵対的学習)が有効です。当然、僕らのprogramは、十分過ぎるくらいのadversarial trainingを行いました。この時に我が校が誇るMagmaが力を発揮します。Magmaは考え得るあらゆるdata改竄patternを生成することが可能です。信じられないくらい短時間で、です。この敵対的学習済みprogramの分析を掻い潜ることができる摂動を生成できるplatformは、Pentagonにある兄弟Magmaだけでしょう。そして、この僕らのprogramは予想もしなかった結果を導き出しました」 Tod「世界中のamateur天文学者から提供されたdataから、敵対的摂動は一切見つからなかったのです。僕らが恐れていた摂動は、杞憂だったのです。これは本当に素晴らしいことです。世界は、善意に満ちています。 意図的に悪意あるdataを送ってくる人は、一人もいなかったのです」 聴講席から自然と拍手が起こった。 MiaがTodに顔を近付け、microphoneに向けて一言言い放った。 Mia「Mr. Orr、ご協力ありがとう」 このmentionは、先ほどのHarveyからの質問に対する御礼にも捉えられるが、敵対的摂動紛いのdataを送りつけてきた犯人はお前らだとこっちはわかってるぞ、という指摘だった。 彼らにしかわからない皮肉である。 Harveyは、聴講席で苦虫を潰した。 Todはその様子を視界に捉えたが、反応を示すことはせず、聴講席上部に席を取っているAPの方を気にかけた。 これ以上この調子で、時間を稼いだりMollyの評価を高めることは難しそうだと思った。 話を変えなければならない。 咳払い。 Tod「ここで、実にmatch pumpなことを言いますが、地球外生命体の探索に関して、個人的に確信していることをお話したいと思います」 何を言い出すのだろう、という雰囲気が小講堂に漂った。 Tod「それは、ETIが見つかる時は、”はっきりと見つかる”ということです」 Tod「これは、地球外生命体からのメッセージ”かも”やなんだか宇宙人からの信号”みたいだ”ではなく、誰が、見ても、聞いても、ETIからのmessageだ、というわかるような確信的な形で見つかるだろう、ということです」 聴講席がざわついた。 ピンと来ている聴講生もいれば、全く珍紛漢紛な表情の者もいた。 腹落ちした聴講生の中には拍手する者すらいた。 Tod「思い出してください。Angkor然り、Borobudur然り、Pavlopetri然り。数百年もの間、人類から忘れ去られていたこれら古代の都が再び僕たちの前に姿を現した時、それらを見て、”遺跡かも”や”遺跡みたいだ”と思った者など誰もいませんでした。それは、確たる存在として、そこに、絶えず、”あった”のです。例え古びようとも、高尚さや荘厳さを損なうことなく、そこに居続けたのです」 Ryan Ahlberg教授よろしく、大袈裟な身振りを加えてTodは小講堂の聴講生全員に訴えかけた。 脈絡のない話にも感じられたが、Todの情熱に押されて、遠慮がちな拍手が鳴り響いた。

Focus Cell-Finally Found It

短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 短い静寂 ゆっくりした打鍵音 return keyを叩く音 error音 そのloopが永遠に続くかと思われたその時、error音とは明らかに異なるSEが響く。 「正解」を示すjingleだった。 Mollyは手を止め、画面を見つめたまま小さく呟く。 Molly「見つけた」 そしてもう一度、今度は歓喜を噛み締めるように言う。 「見つけた!」

Auditorium-Count Down

Todは聴講生の拍手を聞いて束の間は満足げだったが、すぐに我に返った。 さて困った。 話すことがなくなってきた。 Mollyを待つために発表を長引かせるにしても、そろそろ限界だった。 MiaがTodの耳元で囁いた。 Mia「AngkorとBorobudurとあともう一個、あたしも知らないんだけど」 Tod「あとでね」 PavlopetriはGreek南部の海岸で見つかった新石器時代の遺跡だ。 1967年、Nicholas Flemming博士によって発見された時、かつて繁栄を極めたこの港湾都市が、水深わずか4、5meterの穏やかな海の底に眠っていたことに3,000年以上も誰も気がつかなかったことに人々は一番驚いたのだった。 拍手が鳴り終わると、嫌な静寂が訪れた。 今度はTodがMiaに囁いた。 Tod「もう話すことないよ」 Mia「うー、詰んじゃうな、あたしら」 いつもは楽観的なMiaも、Todの焦燥が伝播して、同じように焦った。 Miaは両手でGizmoを強く握り締めた。 その時、MiaのGizmoの画面にmessageがpop upした。 Miaは無言のままTodを掌で制した。 壇上で焦燥するTod達の様子を察し、Harveyがすかさず弱みにつけ込んだ。 Harvey「お前ら、結局ETIは見つかったのか見つかってないのか。はっきりしてくれないか?みんな、その答えを待ってるんだぞ!」 核心をついたど直球の指摘だった。 この質問を避ける為の時間稼ぎだったが、これまで積み上げた努力が一瞬で瓦解する会心の一撃だった。 聴衆も、同じことを思っていたので、Harveyを咎めるような発言もなかった。 いつ野次が飛んでもおかしくない。 気が長い性格の教授すら、懐中時計で時間を確認する姿が見えた。 Todは答えることができず、逡巡するしかなかった。 Tod「それは・・・」 聴衆席からbooが起こり、ついには野次が飛び始めた。 「はっきりしろ」 「いつまで講釈を続けるんだ」 「見つかったのか、見つかってないのか」 すると突然、Miaが片手の拳を高く上げ、叫んだ。 Mia「shí!」 続いて握った拳から人差し指だけ伸ばし、hookのように曲げて見せた。 Mia「jiǔ!」 TodはすぐにMiaが中国語でcountdownを始めたことに気が付いた。 Miaが拳が作っているのはshǒushì(手势)と呼ばれる 数字を示す中国式hand signだ。 聴講者の中にもMiaの意図を理解し、一緒に声を出す者が現れた。 「bā」「qī」 Miaと共に、声は徐々に大きくなった。 聴講者にMiaの本意はわからなかったが、何かが起こりそうなことはわかった。 Mia「liù」「wǔ」「sì」 Mia「sān」「èr」 Mia「yī」 ・・・ 期待と疑問が混ざった沈黙。 その時、忽然と小講堂の入り口が開いた。 そこには、息を切らし、頬を高揚させたMollyの姿があった。 Mollyは呼吸を整えながら、搾り出すように声を発した。 Molly「見つけ、・・・ました」

Auditorium-The Answer

小講堂の聴講席上部にある入り口には、背後から射す陽光の中に、神々しく屹立するMollyの姿影があった。 silhouetteだけで、肩で息をしていることがわかった。 小講堂の静寂が、Mollyが何かを言うのを待っていた。 しかし、沈黙を破ったのはMollyではなかった。 彼女の首に飛びつく者がいた。 Miaだった。 Mia「Attagirl!」 Miaは子供を褒めそやすように、Mollyの頭を撫で回した。 Miaのように感情を爆発させこそしなかったが、Todもまた緊張がほぐれたようだった。 Tod「やっと引けたんだね、当たりくじ」 Todは壇上で小さく拳を握ると、相好を崩した。 聴講席がざわつき始めた。 Mollyが言ったことが真実で、彼らが地球外生命体を発見したのなら、歴史に残る快挙だ。 自分達がその大発見に立ち会うことになるかも知れないのだ。 気持ちが昂ぶるのも当然だった。 小講堂が聴講者の興奮に包まれていった。 Team Aの三人も、にわかには信じられないという表情でお互いの顔を見合った。 Olgaが立ち上がり、MollyとMiaの方に振り返って問い正した。 その言葉は、小講堂にいる全員がいま一番聞きたいことを代弁していた。 Olga「本当に、ETIを見つけたのか?」 一瞬で元の静寂が戻った。 Mollyが聴講席の階段を降りながら答えた。 Molly「本当だよ。間違いない」 Molly「Tod、dataをrepositoryに移してきたから開いてくれる?」 Mollyは気勢を取り戻していた。 応えるように、Todもすぐに行動に移した。 Screenに「入道雲」のdirectoryが映し出された。 「Team B」folderを開いた。 fileが無数に並んでいたが、Todが新しい順に並び替え、最上部のfileを選択した。 Molly「それ。meta dataと簡易分析を大きくしてくれる?」 Todが従った。 fileを選択し、画面右下のwindowを拡大した。 fileのmeta dataと簡易分析結果が表示された。 meta dataのdescriptionには次の情報があった。 Name: DPEris_070593RYNa.fits Kind: Flexible Image Transport System Create: Spark001 Date Modified: 210924 Size: 12.1MB Mia「「冥王星の双子(Pluto's Twin)のやつだ!」 Miaの方を向いて頷くと、Mollyは続けた。 Molly「一旦、metaではなく簡易分析の方に注目してください」 簡易分析結果には、受信した電波の波形らしき曲線のpreviewや、夥しい量の指標とその数値が表示されていた。 Molly「このままだとちょっとわかりにくいですね。Tod、3つだけpick upしてくれる? Fluctuation、DFTM、Variationをお願い」 3つの指標が拡大表示された。 次のような記述が読めた。 Fluctuation: 1,679 DFTM: 1,679 Variation: 2 Mollyが聴講席に向かって言った。 Molly「これ、気が付きませんか?」 聴講者は誰もピンと来ていない。 Molly「これらは、AIがこの観測dataのspectrumの特徴を捉えた数値です。Fluctuationは数値の上下動、DFTMはDeviation form the mean、つまり中央値からの逸脱、そしてVariationは異なるパターンの変化数を表しています」 Molly以外の全員が、考え込んでしまった。 TodとMiaも例に違わず、腕の組んで熟考していた。 OlgaとTodがほとんど同時に何かに気がついた。 Olga「あっ・・・」 Tod「素数だ」 Mollyが頷いた。 Tod「1,679が、素数23と素数73の積なんだ」 聴講席が再びざわついた。 Molly「わかりますよね?」 Mollyは興奮を抑えるように言った。 Molly「そうです。これは、信号です」 聴講者のざわつきがさらに大きくなった。 Miaが理解を得ていない様子でキョロキョロしている。 MiaはTodの顔を覗き込んで言った。 Mia「ちょ、ちょ。どゆこと?」 Tod「素因数分解はわかるよね?」 Mia「うん。整数を素数の掛け算で表すやつでしょ」 Tod「そう。例えば、15を小さい素数から割っていって3x5にする、みたいなことだよね。で、このdataのFluctuationと平均値からの逸脱を見ると、同じ数字になってるよね?」 Mia「1,679だよね。この数を素因数分解するの?」 Tod「その通り。FluctuationとDFTMが一致することなんて珍しいから、そこにMollyは意図的な何かがあると気が付いたんじゃないかな」 Miaは両手を使って一所懸命1,679を小さな素数から順番に割っていた。 Tod「割れた?」 Mia「3、5はもちろんダメで、7もダメ。11でも割れないし、13でも割れない・・・」 聴講者達も一斉に素因数分解を始めた。 答えを発見して奇声を上げる者もいた。 Mia「わかった!23!1,679を割り切れる最小の素数は23だ」 Tod「そう。1,679を小さな素数から順に割っていくと、23で割った時の解が73であることがわかる。つまり、1,679は23と73の積ってことだ」 Mia「それで?それで??」 Tod「そこで、Variationの数値を見てみて」 Mia「えーと。2か」 Tod「そう。この電波に含まれる特徴的な電波の種類は2しかない。ということは・・・」 Todは勿体ぶった態度に一堂は益々駆り立てられた。 Mia「なに?わからない!早く教えて!!」 Tod「この世で二つに分けられるものと言ったら・・・?」 Mia「えーと・・・、縮れ麺派とstraight麺派?一風堂派と一蘭派とか?二郎とそれ以外?」 Tod「一旦ラーメンから離れようか」 Mia「生きるか死ぬか、有りか無し、OnとOffとか?」 Tod「そう、それだよ!」 Mia「わかった。二進法ね。0と1か!」 Tod「大正解!」 Todは聴講席の方に体を向け、説明を続けた。 Tod「この電波は、受信者が素数を理解している前提で、信号の二進数列を図形に並び替えることを意図して作られています。やってみましょう」 壇上の端の演台に進んだ。 Tod「まず、0と1に変換しますね。Mia、keyboard繋げさせて」 演台に置かれたkeyboardをカタカタと打ち込む音。 Tod「すぐ書けます」 言い終わる頃には小気味良くreturn keyを叩く音がした。 screenに、0と1だけで構成された数列が表示された。 Tod「波形の一方の山を1に、もう一方を0に変換しました」 Todはkeyboardを打つ手を止めずに続けた。 Tod「そして、ここから、0を白、1を黒に置き換えましょう」 screen上の数列が、白と黒の四角いblockの並びに変換された。 Tod 「1,679個のblockが並びました。さあ、ここからが見所ですよ。では、これらblockを横73、縦23に並び替えてみましょう」 Miaが手元のgizmoでdrumroll のsound effectを鳴らした。 鳴り終わると同時に、今度はTodがreturn keyを鳴らした。 screenのblockが生き物のように移動し、横73、縦23の大きな白黒図形を形成していった。 しかし、できあがったのは、どう見ても意味を成さないデタラメな図形だった。 Mia「哎呀!」 Tod「ダメですね。では、縦横を逆にして、横23、縦73に並べましょう」 Todがkeyboardを触ると、白黒blockが元の一直線の並びに戻っていく。 Miaに向かって頷くと再びdrumrollが鳴り、終了と同時にTodがreturn keyを叩いた。 Blockが再び動き、screen上部から徐々に大きな図形を形成していった。 今度は上手くいきそうだ。 Blockが規則性を持った形になっていく。 講堂中から驚嘆と歓喜の歓声が上がった。 図形は、明らかに、何かを示していた。 そして、移動する前の小さな白黒blockの列が残り3分の1程度に差し掛かった時、歓声が最高潮に達した。 blockが生き物らしき何かの造形を作り始めたからだった。 その生物は、頭があり、胴体があり、手足がある、humanoidだった。 Mia「Yes!」 Tod「人型地球外生命体からのmessageだ」 MollyとMiaがTodに駆け寄り、3人は抱き合って喜んだ。 聴講席も歓喜の渦となっていた。 Miaが聴講席の後方を見上げると、Assessment Panelの二人でさえHigh Fiveで祝福している。 Miaは、やっとMollyの夢が叶いそうだ、と安堵した。 Team Aの男子2人は、驚きと困惑で呆然としていた。 Caleb「マジかよ」 Harvey「あいつら本当に見つけてしまった。しかも人型の知的生命体だなんて・・・」 Olgaの反応は少し違かった。 鋭い眼光で演壇を見つめていた。 Olga「いや、ちょっと待て」 1,679個全てのblockの移動が終わり、縦23、横73の大きな図形を作り上げた。 Olgaが立ち上がって大きな声で問いかけた。 Olga「そのデータ、入道雲で見つけたって言ったな?」 一堂の注目がOlgaに集中した。 Mia「なに?逆転されそうだからってイチャモンつけるの?!」 Olgaは彼女らしくなく、少し狼狽えた。 Screenを指差して言った。 Olga「いや、そういうことではなく、その図があまりに綺麗というか、alienが作ったものにしてはあまりにわかりやすいな、と思って・・・」 Miaはキョトンとした表情を見せた。 ピンと来ていなかった。 Olgaが少し申し訳なさそうに続けた。 Olga「だから、この星の誰かが作った可能性があるんじゃないかと思って・・・」 Miaは、驚きを隠せなかった。 Olgaの言う通りだとしたら、さっきのはぬか喜びになってしまう。 Olgaの指摘に、小講堂中の浮かれmodeが吹き飛んだ。 聴講者から漏れる疑問の声が、壇上の3人にも聞こえてきた。 Mob「たしかに」 Mob「なんか人間が作ったものっぽい」 Mob「言われてみれば、だな」 ここぞとばかりにHarveyが叫んだ。 Harvey「そうだ!それ、捏造じゃないのか?捏造じゃないって証明できるのか?」 Caleb「どうせ捏造だろ!そもそもどこの誰が観測したdataなんだよ!出所をはっきりしろよ!」 小講堂の雰囲気が「一理ある」と語っているようだった。 確かに、疑われても仕方がないくらい、図形は「人」工的に見えた。 しかし、Mollyは威風堂々。狼狽える様子は微塵もなかった。 Molly「わかりました。それなら、本人に訊いてみよう」 Harvey「本人?観測した人間が、この中にいるのか?」 Mollyは、Harveyの質問には答えず、神妙な顔付きで発言を続けた。 Molly「このdataを観測したのは・・・」 聴講席に座る一人の人物の方に体の向きを変えて言った。 Molly「Ahlberg教授、あなたですよね?」

Auditorium-Ryan

Ryanは黙ったまま返事をしなかった。 Mollyがもう一度訊ねた。 Molly「このdataの観測者は、Ryan Ahlberg教授、あなたですよね?」 Ryanは遠くの一点を見つめるように、表情を変えずに、脚を組んで聴講席に座ったままだった。 Molly「Ahlberg教授?」 Ryan「まいったな」 Molly「え?」 Ryan「いや、ごめん。昔を思い出してたんだ」 Ryanは脚を組み替えた。 Ryan「いかにも、このdataは、僕が30年前に受信したものだ。正確には、僕らが、だけど」 Tod「共同観察者がいたのですね」 Ryanが頷き、説明を加えるよりも先にMollyが言った。 Molly「父ですね」 Ryanが驚いた表情になった。 Ryan「そうだよ。よくわかったね」 Molly「file nameでわかりました」 Ryan「なるほど。さすが親娘だ」 MiaがMollyの肘をつついた。 Mia「どゆこと?」 Mollyは聴講者にもわかるように説明を始めた。 Molly「このdataのfile nameにRYNの三文字が含まれていますよね。これがAlbert教授のfileである証なんです」 一同はscreenに映ったfile name “DPEris_070598RYNa.fits”に着目した。 Molly「わたしの父も同じ習慣なんです。自分が作成したfileに、父の名はRoaldですが、RLDのthree letter codeを必ず入れるんです。子供の頃から見ていたのでわたしもいつの間にか真似するようになって、わたしの場合はMLYを使っています。three letter codeの前の6桁の数字はfileを更新した日付、そして最後のsmall aはversionを示しています」 Todは、Mollyが自身のfileにこの命名規則を用いていることを知っていた。だが、それが彼女の父親譲りであることは初めて知った。 Ryan「Molly、君が僕らの命名規則を引き継いでいたとは、なんだか感慨深いな。昔は、複数人で共同作業をする際、誰のどのfileが最新なのかしょっちゅうわからなくなってね。先祖返りによるerrorが多発したんだ。それで、みんなversion管理を工夫をしたんだけど、僕らのやり方はMollyが説明した通り、file nameに日付と更新者とversionを入れることで、meta dataを調べなくてもどのfileが最新か一目瞭然にしたんだ。それでも、事故が起きる時は起きるのだけど、かなり減らすことができた。Molly、Roaldが言っていただろう?”一文字でも内容を変えたら、必ずfile nameを更新しろ”って」 ⁃ Molly「はい。嫌になるほど言われました」 Mia「けど、Molly。このdataってErisっていう太陽系内準惑星の観測dataだって言ってたよね・・・」 Miaが少し心配そうに訊いた。 Molly「そう。そのせいでこれが教授のfileだって始めは気が付かなかったんだ」 そして、MollyはMiaにではなく、聴講者に向かって言った。 Molly「このdataの観測対象がDwarf Planet Erisであることは、fitsのmeta dataを見ても確かです」 聴講席がまたざわついた。 Harvey「近すぎる・・・」 Olga「それに、habitable zoneから外れてる」 Molly「同じ太陽系の準惑星に知的生命体が存在するとは、にわかには信じ難いと思いますが、確かにこの信号はErisから来たものです。metaの観測条件で確かめました。何故、生命が存続できないはずのErisのような星からこのようなmessageが届いたのか、その理由は・・・」 そこまで話すとMollyは黙ってしまった。 Harvey「どうした!なんでなんだ?!」 Harveyはもはや野次っている訳ではなかった。 知的好奇心で訊いたのだった。 他の聴講者からもMollyの答えを促す声が次々と挙がった。 Molly「その理由は・・・、わたしにもわかりません!」 小講堂は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。 すると、 Ryan「僕にも話させてくれるかい?」 教授が手を上げて聴講席から立ち上がった。 聴講席に静寂が戻った。 Molly「はい。お願いします」 Ryanは教壇に向かって歩きながら話し始めた。 Ryan「少し時間を遡って説明しないとわからないよね。30年前の話をさせてもらおう」 Ryanが登壇した。 Ryan「先ほどMollyが少し話してくれたけど、30年前、彼女のお父さんRoaldと僕は、いまの君達と同じようにこのuniの学生だった。天文学を専攻していたんだ。専攻というのは、一つの領域に特化して学ぶことだ。今と違って当時はどの学生も必ず一つ専攻を選ばなくてはならなかったんだ。僕とRoaldは学校にいる間だけでなく、放課後も一緒に行動することが多かった。ある時二人で電波望遠鏡を作ることに決めたんだ。お金もないし情報も今のように簡単には手に入らなかったから苦労したけど、学業の合間に二人で働いてお金を貯めて、材料を集めて、半年くらいかかったかな。ようやく小さな電波望遠鏡を完成させたんだ。それを持って、夢中になって天体観測したもんだよ。空気が澄んだ季節は近郊の山に登って、一晩中観測したりもした。Beacon Hillによく行ったよ。あそこは夕陽も綺麗に見られるし、この辺りでは一番の観測spotだよ」 Mollyは、嬉しかった。 父も若い頃、あの山で星を見ていたんだ。 Ryan「あの僕らが自作した電波望遠鏡、どうしたんだっけなぁ。愛称までつけて大切にしてたんだよ」 Molly「Dumboですね。今もウチにあります。父が大切に保管してました」 Ryan「そうだ、Dumboだ!僕とRoaldはその望遠鏡をDumboと呼んでいたんだ。Roaldが、名付け親の自分が望遠鏡を預かると言って持って帰ったのを思い出したよ。あぁ、懐かしいなぁ。今度Roaldに言ってSnowballsに拝見に行かせてもらうよ。あぁ、スッキリした。さっきもこのDumboって名前が舌の先まで出かかってたんだけど、あぁ、ほんとスッキリしたよ」 Mollyは愛想笑いするしかなかった。 聴講席が聴きたい話はこんなことではないだろう。 MiaがTodに耳打ちした。 Mia「さっき考え込んでたのはこのことだったのね」 Ryanも我に返った。 Ryan「あぁ、ごめん。話を元に戻そうか。えーと、どこまで話したかな。30年前、僕とRoaldが自作した電波望遠鏡で観測したdataを、Team Bの3人が見つけて、その中からETIのmessageを見つけたってことだね。素晴らしい」 Ryanは聴講生に拍手を促したが、応えた学生はまばらだった。 Ryan「よし。では、なぜTeam Bの実習内容が素晴らしいと言えるか、もう少し説明しよう。もちろん、結果が素晴らしいのは間違いない。このETIのmessage”らしき”ものが見つかった。世紀の大発見だ」 Ryanは「らしき」を強調して言った。 Ryan「だが、彼らが素晴らしいのは結果だけではない。そのapproachだ。この実習を始める前に言ったよね。成果はもちろんあった方が良いけど、teamで協力し、計画を立て、修正をし、goalを目指すというprocessを大切にして欲しい、って。Deutschland生まれの理論物理学者Albert Einsteinは、なんと言ったんだっけ?」 Mia「自転車を漕いで生きろ!」 Tod「それを言うなら”人生とは自転車のようなものだ。倒れないようにするには走らなければならない “は彼の名言だけど、今は違うよ」 Ryan「Miss Marley、challengeを評価する。”何かを学ぶのに、自分自身で経験する以上に良い方法はない”だね。Team Bの三人はそれを体現してくれた。幸運にも恵まれたかもしれない。だけど、結果を導き出すまでのprocessで彼らはとても重要でuniqueな決断をいくつもしている。それが素晴らしいと思うんだ」 三人はお互いの顔を見合った。 笑顔が自然に溢れる。 Ryan「彼らの成功の要因は、僕は三つあったと思う。一つ目は、既に分析が済んでいる過去の観測dataを、現在の技術でもう一度分析し直すというredoのidea。二つ目は、公的機関の観察dataではなく、市井のamateur天文学者の観測dataを分析対象とするidea。そして最後は、habitable zoneに囚われずに観測対象を拡げ、自由な発想で選んだことだ」 ようやく聴講席から称賛の拍手が起こった。 Ryan「これを、単なる偶然の重なりと思ってはいけないよ。我々科学者は、偶然にも見える自然現象の複雑な因果を紐解き、説明可能にすることが仕事だからね。実験と観察、分析と総合、仮説と実証、先代の科学者もずっとこれらを繰り返してきた」 Ryanは続けた。 Ryan「それにしてもMr. Todd、君の作った分析programは素晴らしい。僕らもErisの観察dataの分析は行ったんだよ。けれど、有為なspectrumは見つけられなかった。SETIのredoもだけど、君のprogramにはどんな秘密があるんだい?後学のために教えてもらえないかい?」 Tod「僕は、AIは得意ではありませんし、ましてやprogrammerでもありません。初歩的な知識しかないので、Superagientを通じてできる範囲で手を加えました。過学習を避ける為にdropoutされてきたneuronをsalvageして再計算したのです。 dropout rateを何度も変えて、結果を比較し、非自然性の高い特徴を見つけるところまでを自動化しました。とても複雑な計算が必要ですので、量子computerであるmagmaをお借りできなければやり切ることができませんでした。ありがとうございました」 Ryanは笑顔で頷いた。 Ryan「そして、観測範囲という観点では不利にも関わらずamateur天文学者による観測dataに目を付けたことも斬新だった。収集には工夫が必要だったと思うけど、これにはMs. Marleyが一役買ったようだね。君が幼少の頃から努力を惜しまず活動を続けたからこそ可能となったはずだよ。誰にでもできることではない」 Miaは両腕を胸の前で交差し、左右三本づつ指を立てる”Caramelizer 6 posture”をとった。 歓声が湧いた。 おどけて同じポーズのまま白目になった。 意味はわからない。 Ryan「そして、Ms. Snowball。Team memberの素質を最大限に活かして、ETI signal発見と言う大業を成し遂げた。この個性的なTeamをまとめ上げたleadershipは賞賛に値するよ。最後の最後まで諦めずに、斬新な手法でchallengeを続けたことが、最大の成功理由だ」 聴講者が惜しみない拍手を送った。 Mia「逆転勝利したかな?」 Assessment Panelを見ると、二人は集計をしているのか、お互いのlaptopのscreenを見せ合いながら、盛んに議論している。 Ryan「signalを見つけられなかったdataを送ってくれたみなさんにも、感謝の気持ちを忘れてはならないよ」 Mia「みんな、ありがとう~」 Ryan「今回の発見で、学会だけでなく、世間も大騒ぎになるかもしれない。謙虚な姿勢で、真摯に探求を続けて欲しい。僕も協力するよ」 Ryanが聴講席を見上げ、Assessment Panelの様子を確認した。 Ryan「さて、集計が済んだようだ。今年のToTを発表してもらおう」 ToT、Team of Teams。 今年の最優秀Teamの発表の時が来た。 microphoneがbucket relayでAssessment Panelに渡された。 AP「今年のTeam of Teamsを発表します。例年通り、選ばれたteamのには、member各々が希望する進路への推薦状が授与されます。今年は非常に優秀な学生が多く、最後まで接戦でした。その接戦を競り勝ったTeam of Teams in 2025は・・・」 APは一拍置いた。 Mollyは目を逸らさず、TodとMiaと繋いだ手を固く握った。 AP「Team A!」 歓声が湧いた。 Team Aは肩を抱き合い喜びを分かち合った。 Mia「なんで?!ET発見したのに!」 Tod「ToTは、この実習だけで決まる訳じゃないから、仕方ないよ」 Mia「悔しいぃぃ!!」 Miaの瞳から涙が溢れた。 Mollyは、一度だけ天を仰いだが、すぐにTodとMiaを抱き寄せ囁いた。 Molly「二人とも、わたしをずっと応援してくれてありがとう。こんなに助けてもらったのに、勝てなくてごめんね。けど、わたしは嬉しいよ。二人と一緒にETI見つけられたんだもん」 Mia「Molly~」 Miaは子供のように泣き崩れた。 Mollyは思った。 これで、NASAへの道が潰えた訳ではない。 ETI signalを発見したのだ。 これからもっと忙しくなるに決まっている。 NASAの方から誘いだって来るかもしれない。 しばらく経つと、聴講生達はETI発見とToT発表の興奮が止まぬまま小講堂を後にし始めた。 Team Bの3人はまだ壇上にいて、泣き止まないMiaを2人が慰めていた。 そこに、Ryanが近付いてきてMollyに耳打ちした。 Ryan「すぐに次のchanceがあるよ」 MollyはRyanが何のことを意味しているのかわからなかったが、励ましてくれていることはわかったので、 Molly 「Thank you…」 とだけ答えた。 Ryanはすぐに立ち去ろうとしたが、忽然と泣き止んだMiaの声を聞いて振り返った。 Mia「それにしても、匿名であのdataを提供してくれたのは誰なのかな?」 Ryan「あ、言っておくけど、そのdataの提供者は僕じゃないよ」 Mollyは誰がやったのかわかっていたが、ここでは敢えて何も言わなかった。 代わりにMollyはRyanに質問した。 Molly「Albert教授、生命が住めないはずのErisからETI signalを受信できたのは、何故なんですか?」 Ryan「あ、やっぱりそれ知りたい?」 Olga、Molly「知りたいです!」 Harvey、Caleb「教えてください!」 いつの間にかTeam Aも近くに集まっていた。 それに伴い、小講堂の注目が再び壇上に注がれた。 Ryanは、その様子を見渡し、頭を掻いた。 Ryan「う~ん。もう言ってもいいかな。30年前のことだし、もう時効かな」 壇上のRyanに、小講堂全員の好奇の目が注がれる。 Ryan「僕らが探索していたのは、惑星でも準惑星でもない、oumuamuaなんだ」

Auditorium-Checking Answers

Tod「oumuamua・・・実在・・・するのか??・・・」 Mia「みんな、聞いて。oumuamua!oumuamuaだって!」 MIaがlive streaming中のGizmoのcameraに向かって呼びかけた。 Mia「で、oumuamuaってなに?」 Tod「oumuamuaは、過去に一度だけ観測された恒星間天体(interstellar object)だよ。2017年だったかな。太陽系外から飛んできた物体で、大きさは数百meterだと言われてる。発見当初は彗星と考えられてたんだけど、観測している内にこの天体が太陽系の重力に逆らうように加速する現象が見つかって、地球外文明の探索機じゃないかって噂されたんだよ。ちなみにその名の”oumuamua”は、Hawaii語で「遠方からの使者」とか「斥候」の意味だよ。結果的に、人工物という説は否定されたはずだけど、都市伝説的な噂はその後も絶えなかった。 その大きさから”UFOの母船だ”みたいな感じで。隕石とか彗星とか、大型のdebrisなんかがoumuamuaと間違えられることが多いけど、ちょっと変わった形の雲とかも”oumuamuaだ!”ってwebでたびたび話題になるね。けど、2017年に観測されたoumuamua以来、はっきりと観測されたinterstellar objectはないし、要は謎の天体なんだ」 Mia「彗星と何が違うの?」 Tod「彗星は、太陽系内の天体だから、常に太陽の周りを回ってる。周期はまちまちで、数十年から数百万年かけて。既に2,000以上の彗星が観測されてるよ。一方、oumuamuaは太陽系外の天体で、軌道やその数についてはまだわかってない、と思ってたけど。教授は僕らが知らないことをご存知みたいだよ」 Mia 「なるほど」 Tod「Panspermia(宇宙汎種説)は聞いたことある?地球生命の源は宇宙から来たという考えだ。その媒介になったのがoumuamuaだという説もある。考古学界でもoumuamuaは度々話題になるよ。教授、質問していいですか?そもそも教授は何故、oumuamuaを探索しようと思ったのですか?」 Ryan「当時も、oumuamuaは国家機密だった。学生だった僕らは、oumuamuaは一つじゃない、複数存在するはずだと信じていたんだ。まあ、都市伝説みたいなものだ。そこで、僕らは若くて好奇心旺盛だったから、自分達でoumuamuaの存在を確かめようと思ったんだ。Dumboを作った目的は、oumuamuaを観測するためだった。それで、僕らはいくつかのoumの観測に成功した。けど、厳密に言うと、僕らは観測しただけで、発見した訳ではないんだ。どこにあるかと言うのは、まあ、ある資料を見て知っていたんだ。その情報を頼りに自分達で本当にあるのか実際に観測して確かめて回ったって訳。当時一般に知られてたのは、2017年に地球から2,400万kilo meterのところを通過したoumだけだったけど、僕らはoumにはそのoumのような航行typeだけでなく、定位置に留まる停留typeもあることを知った。その一つがErisにいるoumだ」 Tod「ある資料を見て、って具体的に何の資料のことですか?どこからそんな情報を得たんですか?」 Ryan「さすが、聞き逃さないね。NASAのdata baseだよ。見てはいけないfileをたくさん見たんだ」 Tod「学生の二人がですか?!いったいどうやって??」 Ryan「僕らはNASAでinternをしながらnetwork systemの保守を手伝っていたんだよ」 Tod「なんて大胆な」 Caleb 「なぜ、教授は僕らにそんな機密情報を教えてくれるのですか?」 Ryan「一般公表する予定だったんだよ、明日」 Mia「明日ぁ?!たまたま?」 Ryan「僕も驚いているよ」 Harvey「gun jumpingしてますよね?」 Ryan「怒られるかな?」 Tod「怒られるだけで済めばいいですけど」 そういうとTodはlive中継中のMiaのカメラを指差した。 Miaのliveはまだ続いていた。 Ryan「Oops。ま、手間が破けてよかったんじゃないかな。ははは」 Mia「視聴者数、500万人を越えたよ!」 Ryan「NASAの公式じゃ絶対に届かない数字だ。これなら感謝されることはあっても叱れることはなさそうだ。いや、むしろNASAは毎回発表をMs. Marleyに頼むべきなんじゃないかな」 Molly「NASAは明日どんな発表をする予定だったんですか?」 Ryan「oumの基本的な情報だよ。特定できてるのだけで数百万体あるし、大きさもcentimeterから数kilo meterまである。それに各々の役割や特徴も多種多様なんだ。それらがこの宇宙のあちらこちらに存在するって話」 Mia「数百万体もあるのに内緒にしてたの?」 Ryan 「最低数百万体だよ。数が多すぎて全体像を捉えられていないんだ。安全性も不明だったし、曖昧な情報で不安や混乱を煽るのは避けたかった。それで発表できなかったんだ」 Molly「役割って言いましたけど、oumuamuaは、天体なのですか?人工物なのでしょうか?」 Ryan「その中間的な存在とも言えるし、全く違う存在とも言えるかな」 Tod「全く違うとは、どういう意味ですか?」 Ryan「もっと、生き物みたいな存在、かな・・・」 Olga「生き物?oumuamuaは生命体なのですか?」 Ryan「いや。それは違うか。巨大な石だからね、oumuamuaは。有機鉱石だ。けれども、彼らはとてもuniqueな特徴を持った鉱物なんだ。この地球にはない物質でできている」 学生達の注目がさらにRyanに集中した。 Ryan「まず、彼らはお互いに会話する。何万光年もの距離を双方向通信するんだ。それから、増殖する。自己複製するんだ」 Molly「岩が自己複製?!宇宙で増え続けるんですか??」 Tod「Grey Gooだ!」 Mia 「バイバインだ!」 Ryan「増え続けることで、彼らはrelay方式で通信範囲を拡大し、途方もない距離を隔てたoum同士が通信可能になるんだ」 Tod「oumamuaはprogrammable matterなのですか?」 Olga「量子もつれ通信ですか?」 Tod「tachyon粒子じゃないですか?」 Ryan「それらの質問の答えは、この国の大統領もまだ知らないよ。光速を超える”超光速通信”が可能だとだけ答えておこう」 機密情報のようだった。 Todは、oumuamuaを作ったのは誰なのか訊こうと思ったがやめた。 訊くだけ無駄だろう。 Ryan「つまりだ、Erisのoumからmessageを受信したからと言って、ErisにETIが住んでいる訳ではないということなんだ。何百万、もしかしたら何億光年も離れたoumが初めの受信者で、そこからいくつものoumを仲介して、Erisのoumに辿り着いた可能性がある。そしてそのErisoumの電波を僕らの作ったDumboが受信したんだと思う」 Tod「それでは、どこから発信されたmessageなのか、発信元をtrackすることはできるのでしょうか?」 Ryan 「できるよ。oumは通信し合うって言ったけど、彼らの情報systemは集権型serverを持たない、そうだな、言うならば、分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)なんだよ」 Tod「DLT?!仮想通貨のblockchainみたいですね」 Ryan「まさにその通り。なのでNASAで他のoumも含めて履歴を照合すれば、Erisoumのtransactionもわかるはずだ」 Mia 「よくわからないけど、とにかく発信元を探ることができるだ!おもろっ!会えるの?発信した宇宙人に会えるのかな?」 Tod「面白がってもいられないよ。発信者がどんな生命体かわからないでしょ?地球人を捕食したり、地球を侵略することだってあり得るし。だから、messageを受信することと、このmessageに応答するかどうかはまた別の問題だよ」 Mia 「食べるのはいいけど、食べられるのは嫌だぁ。知的和牛だったら”食べていいのかダメなのか論争”とかになるのかな?みんなは知的和牛食べる派?食べない派?」 TodはMiaのおふざけを諭そうとするが、Ryanが割って入った。 Ryan「ははは。まあ、そういう議論は、まずは発信者を特定できてからだね。それより、そもそもこのmessageに発信者のhintが含まれてると思わないかい?解析してみよう」 Tod「そうですね。図の最上部は数字の1から10を表しているように見えますし、DNAの二重螺旋構造のような線も見えますね。まとめてMagmaに分析させましょう」 Todは胡座で床に座り、組んだ足の上にlaptopを置いて準備を始めた。 Tod「sever sideで処理してもらいましょう。図の意味がわかりやすいように、partごとに色分けさせます」 カタカタとkey boardを叩く音が、人気がなくなった小講堂に響いた。 準備が整うまで、free throwを2回投げるくらいの時間しかかからなかった。 Tod「いいですか?始めますね」 MiaがTodを掌で制し、Gizmoを使って壇上の大型screenの電源を入れ直した。 Mia「せっかくだし大画面で見ようよ」 Todが頷き、分析を開始させようとすると、 Mia「あ、待って。喋らせて」 Tod「え?」 Mia「Magmaだよ」 Tod「あぁ」 Mia「HAL 9000みたいな声がいい」 Tod「Douglas・・・Rainerだっけ?」 TodがKey boardを打ちながら質問すると、意外な人物から答えが聞こえた。 Olga「Rainだ。Douglas Rain」 Todは少し驚いてOlgaの顔を見たが、すぐにlaptopの画面に視線を戻して設定作業を続けた。 Tod「始めますね」 RyanとMollyを見て視線で確認した。 二人が頷くと、Todはカタンとreturn keyを弾いた。 画像の分析結果が、screen上部からゆっくりと映し出された。 blockがpartごとに色付けされ、左右に各partの分析結果が示された。 Magmaが生成した声は、映画「2001年宇宙の旅」に登場するHAL 9000の特徴をよく捉えていた。 HAL9000のような優しくゆっくりとした男性の声による解説が始まった。 HAL「受信data、DPEris_070593RYNa.fitsの分析結果です」 まず、最上部の白いblockの並びはTodが言った通りだった。 HAL「1から10までの数字」 音声と共に、文字によるcaptionが表示された。 Mia「予想通りだね」 続いて、立て続けに4つのpartの説明が続いた。 HAL「水素、炭素、窒素、酸素、リンの原子番号」 HAL「Nucleotide(ヌクレオチド)に含まれる糖と塩基の化学式」 HAL「DNAに含まれるNucleotide(ヌクレオチド)の数:4,294,441,822」 HAL「DNAの二重螺旋構造」 Ryan「我々人類と同じDNA構造だ。それに、我々と同等か同等以上の科学技術levelを持った文明のようだ」 Molly達は驚きのあまり、声も出せずに息を飲んで見守っていたが、次のpartの説明に驚嘆の声が出た。 HAL「人間」「その平均身長:1764 millimetre」 Caleb「人間?奴らも人類、なのか?他の星に人類がいるのか?」 Harvey「人型ってだけでなく、大きさもほぼ同じってことはわかるけど、それだけでは”人間”とは限らないんじゃないか?」 Mia「緑とか青の人型alienかもしれないしね」 次の分析結果が表示されると、驚嘆は悲鳴に代わった。 HAL「太陽系と惑星」 HAL「地球」 Harvey「どういうことだ?」 Mia「それじゃあ、ETIからのmessageじゃないってこと?」 Caleb「地球から発信されたmessageがErisまで届いてまた戻って来たってこと?」 Molly「どういうことなのか、Maggieに詳しく訊いてみよう」 Maggieは、MagmaのOperational AIだった。 Tod「Hey, Maggie、このmessageがこの地球から発信された記録はあるの?」 HALの男性の声からMaggieの女性の声にcross fadeで変更された。 HAL/Maggie「このmessageが発信されたのは2006年より以前と予想されます。2006年より以前の全ての記録をscanします」 Ryan「惑星の数を見てごらん。冥王星が含まれている。冥王星が惑星から準惑星に分類されたのが2006年だから、もしこの地球から発信されたmessageだった場合、少なくともそれより前に発信されていたはずだ」 Maggie「いいえ。地球からこのようなmessageが発信された記録はありません」 Ryan「やはりそうか。あれば僕が知らないはずがない」 Mia「並行宇宙とかマルチバースみたいなことかな」 Miaがワクワクしていることが見てとれた。 Tod「Maggie、どんな可能性が考えられる?」 Maggieが沈黙してしまった。 熟考しているようだ。 これまで、Maggieは全ての質問に即答していたので、一同は少し驚いた。 画面では、Maggieが計算中であることを示すspinnerが回転していた。 量子computerであるMagmaのspinnerは、原子核の周りを電子が回転するdesignだった。 一同は固唾を飲んで、Maggieの回答を待った。 Maggieが小さく、jingleを発した。 Plink(Maggieが発したjingle) Maggie「Mirror planet、星のdoppelgänger現象です。宇宙のはるかかなたに、この地球と瓜二つの星、もう一つの地球が存在する可能性があります」 全く想像していなかった回答に、小講堂の全員が驚嘆した。 Mia「えっ?!」 Tod「はっ??」 Ryanすら、驚きを隠せなかった。 Ryan「What the f…」 Mollyは、screenを見つめたまま呟いた。 Molly「もう一つの地球・・・」 Mollyたちの困難は、まだ始まったばかりだった。 To be continued…→